ビジュアル・ニュース解説

「経済効果○兆円」ってどうやって計算するの?

2012.4.30 掲載
「新幹線開通の経済効果は○○○億円」「五輪開催の経済効果は○兆円」など、インフラの整備、商業施設の開業、工場の誘致、国際的なスポーツイベントの開催などについて、よく経済効果(経済波及効果)が公表されます。特に今年は東京スカイツリーや渋谷ヒカリエなどの大型商業施設の開業が相次いでいるので、経済効果を伝えるニュースをよく目にします。ただ、その算出方法や算出に利用する「産業連関表」という統計表については案外知られていません。今回は経済効果とは何か、どうやって計算するのか、産業連関表のしくみ、経済効果試算の問題点などについて解説します。

経済波及効果の算出に使われる「産業連関表」とは何か?(3)

経済波及効果の算出に使われる「産業連関表」とは何か?(3)
 経済波及効果は、このように実額で表示された状態の産業連関表ではなく、これを加工してできた「逆行列計数表」と呼ばれる計数表を用いて計算します。ある産業の需要が1増加した場合に、その需要を満たすために必要な生産量を示した係数を逆行列係数といいます。この逆行列係数を各産業について一覧表にしたものが逆行列係数表です。この表を使えば、ある産業がどの産業にどれだけの生産の波及効果を及ぼすのかが簡単に計算できます。
 例えば、A県で工場の新設という最終需要が10億円生じた場合、その経済波及効果がどの位あるのか計算してみましょう(図参照)。実際の表にはさまざまな産業の逆行列計数が並んでいますが、ここでは説明を簡略化するために、建設業とその他の産業の2種類のみしかないとします。表のそれぞれの数値に最終需要額を乗じることで経済波及効果が求められます。計算の結果、経済波及効果は17億9500万円となります。
2012年4月30日掲載