ビジュアル・ニュース解説

「経済効果○兆円」ってどうやって計算するの?

2012.4.30 掲載
「新幹線開通の経済効果は○○○億円」「五輪開催の経済効果は○兆円」など、インフラの整備、商業施設の開業、工場の誘致、国際的なスポーツイベントの開催などについて、よく経済効果(経済波及効果)が公表されます。特に今年は東京スカイツリーや渋谷ヒカリエなどの大型商業施設の開業が相次いでいるので、経済効果を伝えるニュースをよく目にします。ただ、その算出方法や算出に利用する「産業連関表」という統計表については案外知られていません。今回は経済効果とは何か、どうやって計算するのか、産業連関表のしくみ、経済効果試算の問題点などについて解説します。

経済波及効果の算出に使われる「産業連関表」とは何か?(1)

経済波及効果の算出に使われる「産業連関表」とは何か?(1)
 経済波及効果は、産業連関表という統計表を用いて計算します。自動車の例からもわかるように、ある産業における経済活動はその産業だけで完結しているわけではありません。農林水産業、製造業、サービス業などの各産業は相互に、あるいは家計などとの間で密接に結びついて、互いに影響を及ぼし合いながら営まれています。産業連関表は、こうした各産業間、および産業と最終消費者との間のモノやサービスの取引状況を一つの表にまとめたものです。
 モノやサービスの産業ごとの生産構造や販売構造をみることができ、経済構造全体の把握や経済分析などに利用されます。日本では、国全体を対象としたものは総務省が中心となって各省庁共同で5年ごとに作成・公表しており、さらに各都道府県や政令指定都市なども作成しています。
 産業連関表は図のような構造をしています。表の上の部分には需要部門の産業などが、表の左側には供給部門の産業などが並んでおり、それらの部門が交じわる箇所に取引額が記載されています。縦(列)方向にみると、モノやサービスを生産するためにどの産業から原材料を仕入れ、どれだけ人件費を要したか、などがわかります。モノ・サービスの生産に必要な原材料を買い入れることを「中間投入」、生産活動のために発生した賃金の支払い(雇用者所得)や企業の利潤(営業余剰)等を「粗付加価値」といいます。中間投入と粗付加価値の総額を総生産額と呼びます。
 表を横(行)方向にみると、各産業が生産したモノやサービスをどこに供給したか(販路構成)がわかります。このうち、家計や政府等で消費されたり外国へ輸出したりする分を「最終需要」、他の産業へ原材料として販売される分を「中間需要」といいます。中間需要と最終需要の総額から輸入分を控除した額が総生産額で、上記と一致します。
2012年4月30日掲載