ビジュアル・ニュース解説

「経済効果○兆円」ってどうやって計算するの?

2012.4.30 掲載
「新幹線開通の経済効果は○○○億円」「五輪開催の経済効果は○兆円」など、インフラの整備、商業施設の開業、工場の誘致、国際的なスポーツイベントの開催などについて、よく経済効果(経済波及効果)が公表されます。特に今年は東京スカイツリーや渋谷ヒカリエなどの大型商業施設の開業が相次いでいるので、経済効果を伝えるニュースをよく目にします。ただ、その算出方法や算出に利用する「産業連関表」という統計表については案外知られていません。今回は経済効果とは何か、どうやって計算するのか、産業連関表のしくみ、経済効果試算の問題点などについて解説します。

経済波及効果の算出に使われる「産業連関表」とは何か?(2)

経済波及効果の算出に使われる「産業連関表」とは何か?(2)
 野菜の生産を例にとって具体的に見てみましょう。ここではわかりやすいように、野菜に関連する業種に絞って簡素化した産業連関表を使います(上図参照)。
 まず表を縦(列)方向に見てください。野菜を作るためには肥料や農薬、温室で栽培する場合には燃料費などの中間投入が必要となります。この例では肥料に200万円、農薬に300万円、燃料に1200万円、計1700万円の中間投入が発生しています。そして雇用者所得800万円、営業余剰1500万円の内訳で粗付加価値を2300万円生み出していることが示されています。総生産額(中間投入と粗付加価値の総額)は4000万円です。
 次に横(行)方向に視点を移します。この表では缶詰などの農産食料品の原料として400万円、飲食店の材料として600万円が売却されています。生産された野菜の一部は加工されることなく、そのまま農家の直売所で販売されており、この表では3000万円が販売されています。この総生産額(中間需要と最終需要の総額)も4000万円です。産業連関表は同じ経済活動を生産面と販売面の両面から捉えたものであることから、縦横の総生産額は必ず一致します。
2012年4月30日掲載