ビジュアル・ニュース解説

「経済効果○兆円」ってどうやって計算するの?

2012.4.30 掲載
「新幹線開通の経済効果は○○○億円」「五輪開催の経済効果は○兆円」など、インフラの整備、商業施設の開業、工場の誘致、国際的なスポーツイベントの開催などについて、よく経済効果(経済波及効果)が公表されます。特に今年は東京スカイツリーや渋谷ヒカリエなどの大型商業施設の開業が相次いでいるので、経済効果を伝えるニュースをよく目にします。ただ、その算出方法や算出に利用する「産業連関表」という統計表については案外知られていません。今回は経済効果とは何か、どうやって計算するのか、産業連関表のしくみ、経済効果試算の問題点などについて解説します。

ある産業に新たな需要が生じると関連産業の生産も喚起される

ある産業に新たな需要が生じると関連産業の生産も喚起される
 経済効果とは、ある出来事が起こることで特定の国・地域にどのくらいの経済的な好影響があるのかをシミュレートし、金額で示したものです。
 算出する際の基礎となるのが経済波及効果という考え方です。ある産業に新たな需要が生じ、その需要を満たすために生産活動が拡大すると、原材料や資材などの取引や消費活動を通じて他の産業にも次々と影響を及ぼします。
 例えば自動車需要が生じた場合、新たに自動車を生産するためには車体、エンジン、ブレーキ、バッテリー、タイヤ、窓ガラス、座席、ライト、ミラー、電子制御装置、エアコンなど、じつにさまざまな部品の生産が必要になります。そして、これらの部品を生産するためには鉄鋼や塗料、ゴム、プラスチック、ウレタン、繊維、半導体(シリコン)といった多種多様な原材料も生産しなければなりません。部品や原材料の生産が増加すれば、これらの生産に従事する従業員の所得が増え、買い物や飲食などの消費も増加すると考えられます。この消費需要を満たすために、さらに食品や日用品など自動車生産とは直接的には関係がない産業の生産も増加するわけです。このように新たな需要が発生すると、水面に投げ込まれた石が波紋を起こすように影響が多方面へ及ぶことになります。この過程のことを経済波及効果といいます。
2012年4月30日掲載