実際の経済効果の算出では、まず事業やイベントなどの計算対象を設定した後、その結果直接的に生じる需要額(直接効果)を過去の事例などを参考に推計します。そして、その数字を産業連関表の産業部門に当てはめ、逆行列係数に乗ずることで経済波及効果を求めていきます。
例えば、東京都は2016年の夏季五輪を招致する際に、選ばれていれば経済効果は2兆9400億円に達するとしていました。まず過去の海外の大会実績などを基に、スタジアム整備や公式Tシャツ等のグッズの購入などに使われるお金を1兆3000億円と推計(直接効果)。その上で、産業連関表を用いて、施設の資材を作る鉄鋼メーカーなど関連産業で生じる生産額の合計を約9900億円(第1次波及効果)、五輪関連産業で働く人の所得が伸び、飲食や買い物が増える影響を約6500億円(第2次波及効果)と導き出しています。
このほかにも、東京マラソンの開催による経済効果を約240億円、東京スカイツリーの開業に伴う経済効果を880億円、女子サッカーワールドカップで日本代表「なでしこジャパン」が優勝したことに伴う経済効果を1兆円などと試算した例もあります。なお、こうした経済効果を試算する主体は特に決まっているわけではなく、政府(各省庁)、事業主体となる企業や地方自治体、各種の経済分析を日々行っているシンクタンクや研究者などさまざまなケースがあります。