ビジュアル・ニュース解説

宅配便に転機、その歩みと課題を知る

2017.5.15 掲載
小さめの荷物を自宅や企業のオフィスなどに届ける宅配便は、いまや生活を支えるインフラとして欠かせません。しかし、最近はインターネット通販の拡大で取扱数が想定以上に急増したため、必要な配達員数の確保が追いつかず、人手不足が深刻です。コストがかさむ再配達も増えており、これまでの利便性第一のサービスは見直しを迫られています。今回は宅配便サービスの概要やこれまでの歩み、直面する課題と事業者のその解消への取り組みについて解説します。

3.人件費の高騰と単価の低迷で利益なき繁忙に(1)

3.人件費の高騰と単価の低迷で利益なき繁忙に(1)
 宅配便事業は現在、急増する荷物に配達員の増員が追いつかない状況が続いており、深刻な人手不足に直面しています。16年末には荷物が多過ぎてさばききれず、配達の遅れが目立ちました。配達員の長時間労働が常態化し、現場はパンク状態に陥っています。
 宅配便の荷物増加の背景にあるのはネット通販の急拡大です。ネット通販の市場規模は15年時点で年間13兆8000億円と、5年間で8割も増えました。荷物の増加に対応するには配達員の数を増やしたり、配達の一部を外部に委託したりする必要があります。しかし、人手不足の下での人材の争奪戦は激しく、人件費が高騰し、外部委託のコストも上昇しています。
 この影響が特に大きいのが業界最大手のヤマトで、ネット通販首位のアマゾンジャパン(東京・目黒)の配送を引き受けているため人手不足が顕著です。輸送する荷物が増えても運賃の単価は下がっています。16年3月期は1個当たり578円と前の年度と比べ3%近く値下がりしました。大口顧客向けに割引をしているため、単価が上がらないのです。人件費の高騰と外部委託費の増加に単価の低迷が加わり、事業者の業績を圧迫しています。
2017年5月15日掲載