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宅配便に転機、その歩みと課題を知る

2017.5.15 掲載
小さめの荷物を自宅や企業のオフィスなどに届ける宅配便は、いまや生活を支えるインフラとして欠かせません。しかし、最近はインターネット通販の拡大で取扱数が想定以上に急増したため、必要な配達員数の確保が追いつかず、人手不足が深刻です。コストがかさむ再配達も増えており、これまでの利便性第一のサービスは見直しを迫られています。今回は宅配便サービスの概要やこれまでの歩み、直面する課題と事業者のその解消への取り組みについて解説します。

2.ヤマトがサービスの先駆け、上位3社で9割超すシェア

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 大和運輸(現ヤマト運輸)が1976年に「宅急便」と名づけてサービスを生み出したのが宅配便の始まりです。それまでは個人が荷物を発送するには、郵便小包か国鉄(当時)の鉄道小荷物を利用するしかありませんでした。郵便局や駅まで荷物を持っていかなければならず、輸送に時間がかかるうえ、いつ届くかわからず、取り扱いが雑で荷物が壊れることが少なくないなど、サービスの質はよくありませんでした。
 宅配便は配達員が家まで荷物を引き取りにきてくれ、早ければ翌日に配達されて運賃体系もはっきり決まっています。その便利さが評判となり、急速に利用が広がりました。その後、他のトラック運送業者も次々と追随して競争が激化。ヤマトの黒猫をはじめ、各社がペリカン、カンガルー、子熊などの動物をサービスのシンボルマークに採用したことから、宅配便をめぐる事業者間の競争は「動物戦争」と呼ばれました。
 事業者は激しい競争を勝ち抜くため、スキー場やゴルフ場への用具配送、冷蔵・冷凍配送、通信販売の代引き、配達する日や時間の指定などの新サービスを次々に打ち出し、需要を開拓しました。近年はネット通販でニーズが高まる即日配送にも一部で対応しています。
 宅配便市場は一時足踏みをしたものの、サービスの開始以来ほぼ広がり続けています。世界同時不況で景気が落ち込んだ2008年度に初めて取扱量が前年度を下回り09年度も減少が続きましたが、その後は14年度を除き再び増加しています。15年度の取扱個数は37億4493万個に上ります。
 全国で宅配便サービスを提供するには多額の設備投資が必要なため、事業者は限られます。現在の代表的な事業者はヤマト運輸、佐川急便、日本郵便で、この3社で9割以上のシェアを占めています。
2017年5月15日掲載