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ノーベル賞はどのように決まる?~選考の仕方や日本の研究環境の課題を知る

2015.12.7 掲載
2015年のノーベル生理学・医学賞は北里大学の大村智特別栄誉教授らに、物理学賞は東京大学の梶田隆章宇宙線研究所長らにそれぞれ授与されることが決まりました。2000年以降、日本人の自然科学部門の受賞者は米国籍の2人を含め16人で、米国に次ぐ多さです。ただ、日本の科学技術力の高さを今後も世界に示していくためには課題もあります。今回はノーベル賞とはどんな賞なのか、その選考の方法、日本の研究環境の課題などについて解説します。

5.受賞の継続に欠かせぬ魅力的な研究環境の整備(2)

5.受賞の継続に欠かせぬ魅力的な研究環境の整備(2)
 日本人のノーベル賞受賞は2年連続で、受賞者は24人(米国籍を含む)となりました。最近の日本人の受賞ラッシュは研究業績の評価と授賞のタイムラグが関係しています。ノーベル賞は最初の発見者かどうかなど、研究業績についてお金と時間をかけてじっくり調べるため、20~30年前の成果で受賞することが少なくありません。今回受賞した大村氏が熱帯病の治療薬開発に取り組んだのは1970年代で、梶田氏がニュートリノに質量があると発表したのは98年です。70~80年代は日本の研究者が欧米に追いつこうと実用技術の開発に注力した時期で、その成果が今、評価されているわけです。
 今後も日本が科学技術で高い水準を維持し、引き続きノーベル賞の受賞につなげるためには研究環境の充実が欠かせません。若い世代が安心して研究に打ち込めるよう、ポストの確保や報酬引き上げなど待遇の改善や、研究意欲を高める適切な研究費配分などが求められます。
 2014年には青色発光ダイオード(LED)の発明で天野浩氏ら日本人3人が物理学賞を受賞。15年も画期的な熱帯病治療薬を生み出した大村氏の業績に光を当てるなど、ノーベル賞は近年、人類に直接貢献する業績を評価する傾向があります。研究成果を新たな価値に結びつけるには、常識にとらわれない自由な発想ができる人材の育成が欠かせず、その点を意識した研究環境の整備も重要です。今回の受賞がその実現に踏み出すきっかけとなることが期待されます。
2015年12月7日掲載