近年、火山の噴火が国内で相次いでいます。2014年の御嶽山の噴火は犠牲者58人、行方不明者5人と、1991年に発生した長崎県の雲仙・普賢岳の火砕流を上回る戦後最悪の火山災害となりました。15年に入ってからも5月に口永良部島、6月から7月にかけて箱根山、9月には熊本県の阿蘇山中岳と立て続けに噴火しました。
御嶽山の噴火の際、気象庁は噴火の約10分前に微弱な震動を観測していましたが、登山者に危険を知らせる情報は出しませんでした。御嶽山の噴火警戒レベルは当時「平常」で、活火山と知らずに登った人もいたと思われます。
これを教訓にして、国は15年8月から登山者のスマートフォンなど携帯端末に噴火の情報を送る「噴火速報」の運用を始めました。これに先立ち5月には、活火山であることを意識してもらうため、噴火警戒レベル1を「平常」から「活火山であることに留意」に変更。さらに常時監視する活火山も47から50に増やし、周辺の129市町村に避難計画の作成を義務づけるなど防災体制を強化します。
しかし、なお多くの火山の観測体制は手薄なままで、観測機器の老朽化が進んでいます。監視対象の一層の拡大の検討や古い観測機器の更新など、監視・防災体制の一段の強化が急務です。世界有数の火山国でありながら、研究者の数も十分ではありません。大学での研究者育成体制の整備や企業の人材活用などが必要です。
火山の噴火は地震や豪雨など他の自然災害に比べればそれほど多くありませんが、ひとたび起きれば被害は甚大です。火山国で暮らしていることを自覚し、日頃から防災意識を高めておくことが求められています。