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海を越えて飛来するPM2.5とは?~大気汚染の基礎知識と最新事情について知る!

2013.4.15 掲載
急速に工業化や都市化が進む新興国で大気汚染が深刻化しています。健康被害が懸念される微少粒子状物質「PM2.5」が中国から日本に飛来するなど、最近では国境を越えて汚染が周辺国・地域にまで拡大する“越境大気汚染”も増えています。今回は大気汚染の基礎知識、大気汚染に対する国内外の取り組み、越境大気汚染とPM2.5の現状などについて解説します。

4. 急がれる国際的な協力体制の確立

 国や自治体はPM2.5の監視体制の強化を急いでいますが、PM2.5に限らず、国を越えて被害が広がる越境大気汚染の問題解決のためには国際的な協力が不可欠です。早くから取り組んでいるのは地続きで他国と隣接している欧米の先進国です。欧州では1960年代から広域にわたって酸性雨被害が生じ、1970年代には米国の五大湖周辺の工業地帯に端を発する大気汚染が隣国のカナダで問題になりました。こうした経緯から欧州諸国を中心に、米国、カナダなども加盟して、1979年に「長距離越境大気汚染条約」を締結。酸性雨などの越境大気汚染の防止対策を義務付けるとともに、被害影響の状況の監視・評価、原因物質の排出削減対策、国際協力やモニタリングの実施、情報交換の推進などを定めています。
 一方、東アジアには酸性雨をモニタリングしたり調査研究したりするための国際ネットワークはありますが、越境する大気汚染物質を規制する条約はありません。東アジアの中でいち早く環境問題を乗り越えてきた実績がある日本は、越境大気汚染に対応する枠組み作りのために主導力を発揮すべき立場といえます。
 もちろん技術的な支援も重要です。優れた浄化技術を持つ日本にはその役割が大いに期待されています。PM2.5の飛来で実感されたように、隣国の大気汚染はけして対岸の火事ではありません。経済発展を優先したい新興国、環境規制を強化したい先進国と立場に違いはありますが、関係各国が利害を乗り越え、地域全体の問題として解決に向けて早急に取り組むことが求められます。
2013年4月15日掲載