工業化や都市化の先頭を走ってきた先進国では、早くから大気汚染に悩まされてきました。長く大気汚染の原因となってきたのは、石炭を燃やすことで発生するばい煙(煙やすす)です。燃料の主力が石炭から石油に替わった20世紀半ば頃からは、窒素酸化物や硫黄酸化物、これらを原因とする光化学スモッグが大気汚染の中心となりました。先進国ではこうした新たな大気汚染に対応するため、大気汚染物質の排出規制の導入が相次ぎ、大気汚染物質の浄化技術の開発が積極的に進められました。
日本でも高度経済成長期の1960年代に、硫黄酸化物などが原因と見られるぜんそく患者が増えたり、1970年代に全国の都市部で光化学スモッグが多発するなど、大気汚染が大きな社会問題となりました。このため、1968年に「大気汚染防止法」が制定されるなど、窒素酸化物や硫黄酸化物などの大気汚染物質の排出が厳しく規制されました。
こうした規制を受け、日本では自動車メーカーが大気汚染物質をなるべく排出しないクルマの開発に力を入れるようになり、排出ガスの浄化技術が急速に進歩しました。代表的なものが「三元触媒」と呼ばれる装置です。これは排出ガスに含まれる窒素酸化物などの大気汚染物質を特殊な金属により窒素や二酸化炭素などの害の少ない物質に分解する装置で、現在ではほとんどのガソリンエンジン車に装備されています。またディーゼル車から排出される浮遊粒子状物質を減らすフィルター装置なども実用化されています。規制強化を背景に工場の排煙処理技術も飛躍的に向上し、排煙から粉じんを取り除く集じん装置や硫黄酸化物を取り除く排煙脱硫装置が普及しました。