大気中で特定の微粒子や気体(大気汚染物質)の量が増えて、地球環境や人の健康に悪影響を及ぼす現象を大気汚染といいます。火山の噴火や山火事などの自然由来のものもありますが、多くは人間の諸活動によって発生します。
主な大気汚染物質は、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料の燃焼によってもたらされます。産業革命以来、私たち人間は化石燃料をさまざまな経済・社会活動に利用してきましたが、化石燃料は燃やすと「浮遊粒子状物質(SPM)」「窒素酸化物(NOx)」「硫黄酸化物(SOx)」などの大気汚染物質を発生します。
浮遊粒子状物質とは、大きさが10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下の大気中に浮遊する微少の粒子で、主にボイラーやディーゼル車の排出ガスに含まれます。大気中に長時間とどまり続け、肺や気管などに沈着してぜんそくや肺がんなどを引き起こすおそれがあるとされます。
窒素酸化物は主に自動車の排気ガス、硫黄酸化物は主に工場や発電所の排出ガスに含まれます。いずれも呼吸器を刺激して咳や痰の原因となり、ぜんそくなどの呼吸困難を引き起こすことがあります。また窒素酸化物と硫黄酸化物は大気中の水分と反応して「酸性雨」の原因にもなります。酸性雨は人体に直接影響を与えるほど高濃度ではありませんが硫酸や硝酸を含みます。湖や池が酸性化して魚がいなくなったり、森林が枯れたり、歴史的価値のある建造物や彫像が浸食されるなどの被害が報告されています。
さらに窒素酸化物は太陽の紫外線を受けると化学反応を起こして「光化学オキシダント」という物質に変化します。これが大量に発生し、霧状になって大気中に漂う現象が「光化学スモッグ」です。太陽の光が強くて気温の高い夏の昼間などに起こりやすい現象で、発生すると目や喉が痛くなったり、皮膚が赤くなったりするほか、頭痛やめまい、意識がもうろうとなることもあります。
このほかの大気汚染物質としては、微少粒子状物質の「PM2.5」(詳細は後述)、廃棄物の焼却炉などから排出される「ダイオキシン」、家屋の建材などから発生する「揮発性有機化合物(VOC)」、鉱物や工業製品などが由来の「石綿(アスベスト)」などがあります。