現在、欧州危機により再びCDSが注目されています。欧州危機の発端はギリシャでした。2009年10月、同国が深刻な財政赤字状態にあることが明らかになり、国債を通じて借りた資金を返せなくなる「デフォルト(債務不履行)」に陥るのではないかとの不安が金融市場に広がりました。
この事態に対処するため、EU(欧州連合)は10年5月、IMF(国際通貨基金)と共にギリシャに対する1100億ユーロの金融支援を実施。さらに今年3月には、ギリシャ国債を保有する民間投資家に債権放棄を求めると同時に追加の金融支援策に踏み切りました。
この債権放棄の際に焦点となったのがCDSでした。追加の金融支援策では、民間投資家に自発的に債権放棄に協力してもらうか、強制的に債権放棄をさせるかどうかが議論となりました。債権放棄が強制された場合はCDSの保証が生じるため(CDSの発動)、ギリシャ関連のCDSを売っていた金融機関などが負担に耐えきれずに破たんするリスクがありました。結局ギリシャ政府は債権放棄の強制に踏み切りましたが、幸いギリシャ国債のCDSは売り手と買い手が分散されていて特定の金融機関の負担が膨らむことはありませんでした。むしろ、CDSが発動され債権放棄を余儀なくされた投資家の負担が軽減されたこともあって、金融市場の大きな混乱は避けられました。