ただし、欧州債務危機の行方は予断を許さない状況が続いています。ギリシャ国債の債権放棄が実施されたことで、同じように深刻な財政赤字を抱えるポルトガル、スペイン、イタリアの債務も強制削減されるとの見方が拡がっており、これらの国々の国債の信用力を示すCDS保証料率が上昇しています。CDS発動が相次ぐような事態が続けば、それが引き金となって金融市場が混乱する恐れがあります。
ギリシャ情勢も火種を抱えたままです。EUによる金融支援と引き換えに厳しい緊縮財政と構造改革を強いられているギリシャでは、EUが主導する改革を放棄すべきとの声も台頭しています。6月中旬には議会の再選挙が実施されますが、緊縮財政反対派による政権が発足すればEU離脱という事態にまで発展しかねません。そうなれば欧州の金融市場や実体経済の大混乱は避けられず、世界経済にも悪影響が及ぶのは必至です。こうした懸念を反映して、欧州の中では安全資産とされているドイツ国債ですらCDS保証率はわずかに上昇傾向にあります。薄氷を踏む状態が続く欧州危機とCDSを巡る動向からは当分目が離せそうにありません。