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欧州危機で注目されている「CDS」ってなあに?

2012.6.18 掲載
ギリシャに端を発した債務危機で欧州が揺れるなか、信用リスクを回避する手段である「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」に注目が集まっています。ギリシャ国債などを対象とするCDS保証料率の変動は欧州各国の信用力を示し、欧州危機の先行きを見通すためのバロメーターにもなっているためです。今回はCDSとは何か、その基本的な仕組み、2008年秋のリーマン・ショックや欧州危機との関係などについて解説します。

債権の焦げ付きリスクに備えるデリバティブの一種

債権の焦げ付きリスクに備えるデリバティブの一種
 株式や債券といった金融商品そのものを取引するのではなく、それらに派生して生まれる権利などを売買したり契約を結んだりする金融商品を「デリバティブ(金融派生商品)」といいます。「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」はデリバティブの一種で、いわば取引先の倒産に備える保険のようなものです。
 基本的な考え方を簡略化して説明しましょう。A社が、取引先であるB社の経営破たんに備えるためC銀行とCDSの取引契約をします。仮にB社に対し1000万円の売掛債権を保有しているとすると、A社はC銀行と想定元本1000万円のCDS契約を結び、対価として毎年一定の保証料(例えば元本に対して年率2%であれば20万円)を支払います。そして実際にB社が経営破たんした場合、A社はC銀行から元本相当額の1000万円を支払ってもらえる仕組みです。これにより、A社はB社が破たんしても大きな損失を被らずに済み、保証する側のC銀行はB社が経営破たんしなければ定期的に保証料を受けとれます。
 このようにCDSは債務の保証を内容とする金融商品ですが、投機的手段としても利用されています。CDSが一般的な保険などとは異なり、実際に債権を保有していなくても取引できるためです。先の例でいえば、A社はB社への売掛債権がなくても、C銀行からB社を対象としたCDSを購入でき、B社が倒産すれば巨額のお金を得られるのです。
 なお、CDSの主な取引主体は銀行、証券会社、ヘッジファンドなどの投資のプロです。これらの各主体は、債務を保証される側(CDSの買い手)になることも、保証する側(CDSの売り手)になることもあります。またCDSの対象は企業に限られず、国を対象にするものもあります。
 保証料率は企業や国の信用力(債務を弁済できるかどうかなど)に対する市場の評価を反映して常に変動します。一般的な保険と同様、信用力が低い企業や国のCDSの保証料率は高くなり、信用力が高い企業や国の保証料率は低くなります。このため、CDSの保証料率は債券の信用格付けのように、投資家などが企業や国の財務状況や信用力を判断する指標にもなっています。
2012年6月18日掲載