ビジュアル・ニュース解説

大量データをけた違いに速く通信―5G商用化

2020.1.20 掲載
 大容量のデータを瞬時に送受信できる次世代通信規格「5G」の商用サービスが2020年春に国内で始まります。この特長を生かして、あらゆるモノがネットにつながるIoTを進める基盤となります。既に米国と韓国の通信大手などが商用化しており、他の国も相次ぎ導入する予定です。今回は5Gと現行規格との違いや今後、社会をどう変えるかなどについて解説します。

2.2時間の映画を約3秒でダウンロード

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 今後、5Gは世界中で普及していくとみられます。スウェーデンの通信機器大手エリクソンが2019年11月に発表した「モビリティー・リポート」では、25年末に世界の携帯電話契約数は89億件に達し、そのうち3割の26億件を5Gが占めると予測しています。
 5Gは社会にどのような変化をもたらすのでしょうか。5Gの恩恵を最も実感できるのは映像の配信でしょう。4Gでは5分程度かかる2時間の映画のダウンロードが5Gなら3秒程度でストレスなくダウンロードできます。4Kや8Kの高精細映像など大容量データの送受信で速度の違いが顕著になるはずです。
 5Gは産業や暮らしも大きく変えます。現在、家電や住宅、自動車、工場の製造装置などにIoTが広がり始めています。5Gによって情報のやり取りなどの速度や精度が飛躍的に改善するため、IoT化が急速に進むでしょう。特に大容量データのリアルタイム処理と多様な通信機器から得られる情報の同時処理が必要な自動運転やファクトリーオートメーション(FA、工場自動化)での利用が期待されています。
 「想定ほど普及が進んでいない」とされる仮想現実(VR)の発展も5Gがカギを握るといわれます。4G のVR映像では通信の遅延によって、乗り物酔いのような症状の「VR酔い」が起きることがあり、普及を妨げる一因となっています。5Gで超低遅延通信ができるようになればこの問題はなくなり、これまでにない用途やコンテンツが生まれる可能性があります。とりわけ日本が強みを持つネット経由でプレーするゲームへの応用が有望です。
 このほか、警備や建設、医療などの分野に応用が広がれば、作業の自動化や遠隔医療の充実によって、人手不足や地域間格差などの社会問題を解消する一助になることが期待できます。
2020年1月20日掲載