ビジュアル・ニュース解説

貿易自由化への歩みを知る~WTOからFTA重視へ

2018.6.4 掲載
米国は2018年3月、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置を発動し、それぞれの関税の税率を引き上げました。トランプ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など自国優先の通商政策を次々と打ち出し、これまで世界貿易機関(WTO)を中心に推進してきた自由貿易体制を揺るがしています。今回はWTO発足に至るまでの世界の貿易自由化の経緯や、自由貿易協定(FTA)の締結など各国間の貿易交渉、トランプ政権の通商政策とその影響について解説します。

2.自由貿易の国際ルールづくりを担うWTO(2)

2.自由貿易の国際ルールづくりを担うWTO(2)
 自由貿易の国際ルールづくりを推進する機関がWTOです。戦後の48年に貿易自由化を目指して発効した関税貿易一般協定(GATT)を発展させるかたちで、95年に発足しました。現在、加盟しているのは164カ国・地域で、日本はGATT体制時の55年から加盟しています。モノだけでなくサービスの貿易や知的財産権の保護など、幅広い分野を対象に貿易のルールを定めています。
 貿易相手国が不当に安い価格で輸出(ダンピング)することで自国産業が被害を受けた場合には、反ダンピング関税や緊急輸入制限(セーフガード)などの対抗措置を取ることを加盟国に認めています。その一方で、相手国はこうした措置に不満があればWTOに提訴や仲裁を依頼できるなど、紛争解決の制度も設けています。
2018年6月4日掲載