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貿易自由化への歩みを知る~WTOからFTA重視へ

2018.6.4 掲載
米国は2018年3月、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置を発動し、それぞれの関税の税率を引き上げました。トランプ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など自国優先の通商政策を次々と打ち出し、これまで世界貿易機関(WTO)を中心に推進してきた自由貿易体制を揺るがしています。今回はWTO発足に至るまでの世界の貿易自由化の経緯や、自由貿易協定(FTA)の締結など各国間の貿易交渉、トランプ政権の通商政策とその影響について解説します。

3. 2国間や複数国によるFTAが自由貿易交渉の中心に

3. 2国間や複数国によるFTAが自由貿易交渉の中心に
 前身のGATT時代を含め、WTOはこれまで農産品から工業品まで多くの品目を対象に、自由貿易のルールづくりための多角的貿易交渉(ラウンド)を重ねてきました。ただ全会一致が原則で、加盟国が増えるにつれて先進国と新興国の利害対立が激しくなり、交渉は停滞しています。
 このため、現在の自由貿易交渉は2国間や複数国によるFTAと経済連携協定(EPA)が中心となっています。FTAは特定の国・地域間で関税や輸入数量制限などの貿易障壁を削減・撤廃するもので、ヒトの移動や投資などを含む幅広い経済活動の強化に関する協定がEPAです。先進国を中心にFTAやEPAの締結が広がっており、日本は2002年に発効したシンガポールとのEPAをはじめ16のEPAを結んでいます。
 近年では、複数の国でつくる広域のFTAである「メガFTA」の締結に多くの国が注力しています。その代表的なものがTPPです。日本や米国などアジア太平洋地域の12カ国が参加して、原則すべての品目の関税撤廃を目指して5年半余りにわたって協議し、15年10月に大筋合意しました。しかし17年1月に発足した米トランプ政権は自国産業にメリットがないとして離脱を表明。米国以外の参加国は18年3月、協定を修正した「TPP11」に署名し、発効に向けて国内手続きを進めています。
2018年6月4日掲載