ビジュアル・ニュース解説

貿易自由化への歩みを知る~WTOからFTA重視へ

2018.6.4 掲載
米国は2018年3月、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置を発動し、それぞれの関税の税率を引き上げました。トランプ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など自国優先の通商政策を次々と打ち出し、これまで世界貿易機関(WTO)を中心に推進してきた自由貿易体制を揺るがしています。今回はWTO発足に至るまでの世界の貿易自由化の経緯や、自由貿易協定(FTA)の締結など各国間の貿易交渉、トランプ政権の通商政策とその影響について解説します。

1.自由貿易の国際ルールづくりを担うWTO(1)

1.自由貿易の国際ルールづくりを担うWTO(1)
 国内産業の保護・育成を目的に、関税や輸入量の一定以下の抑制などの障壁によって貿易を制限することを保護貿易といいます。多くの国が貿易に何らかの障壁を設けていますが、保護貿易が行き過ぎれば貿易が停滞して世界経済に悪影響を与えます。ときには世界平和をおびやかすこともあります。1930年代には世界恐慌をきっかけに、多くの国が競うように保護貿易政策に走りました。これが国家間の対立を激化させ、第2次世界大戦が起きる一因になりました。この反省から、各国は戦後、関税などの貿易障壁を最小限にする自由貿易を目指しました。
2018年6月4日掲載