ビジュアル・ニュース解説

インバウンド消費って何?

2015.10.19 掲載
日本を訪れる外国人が急増しています。なかでもアジアからの旅行者が大きく伸びており、中国人観光客の家電や日用品などの大量購入は「爆買い」と呼ばれ、注目を集めています。訪日外国人による国内での消費である「インバウンド消費」は2014年に2兆円を突破。小売りや外食業界の収益に大きな影響を与えるようになっています。今回はインバウンド消費の動向や急拡大の背景、それを取り込むための企業の取り組みなどについて解説します。

4.五輪に向けてハード・ソフト両面で受け入れ体制整備が必要に

4.五輪に向けてハード・ソフト両面で受け入れ体制整備が必要に
 政府は東京五輪が開かれる2020年に向けて、訪日客を2000万人、インバウンド消費を現在の2倍の約4兆円に増やす目標を掲げています。少子化による人口減少が進むなか、新たな消費の担い手として訪日外国人は存在感をますます増しそうです。
 ただ、世界各国・地域への外国人訪問者数のランキングでは日本は22位で、マレーシアやタイ、韓国よりも下位にとどまっています(14年、日本政府観光局の作成データ)。ランキング1位のフランスは8400万人に達しており、日本の百貨店の外国人購買比率は1%程度ですが、フランスでは5割近い百貨店もあるといわれます。
 観光立国に向けて、課題は山積しています。まず必要なのが観光の玄関口である空港からの交通の整備です。外国人客には空港からの乗り継ぎがわかりにくいため、空港施設内の案内充実や動線の改善、中心街へのアクセスが良い交通機関の新設などが求められます。
 最近では宿泊施設の不足が問題になっています。震災があった11年に平均で51.8%だった全国の宿泊施設の客室稼働率は、15年6月には57.5%にまで上昇しています。特に東京や大阪などの都心部のホテル稼働率は80%前後に上り、需給がひっ迫しています。地方の旅館は受け入れに余力があるため、東京や京都、大阪、富士山など「ゴールデンルート」と呼ばれる定番の観光ルート以外の地域の魅力を訴えて宿泊を促せば需給の改善につながります。
 免税対応店の数もまだ十分とは言えません。国内の小売店約100万店のうち、免税店は2%程度にとどまります。
 政府は15年6月、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」をまとめ、インバウンド消費の拡大や地方創生を実現する観光地域づくりなどに関する行動計画を策定しました。観光を新たな成長産業に育てていくためには、宿泊施設や交通機関などのハード面と、外国語や免税への対応、地域の魅力の対外発信などのソフト面の両面で海外からの旅行客の受け入れ体制整備が求められます。
2015年10月19日掲載