ビジュアル・ニュース解説

原油価格の基礎と最新動向を知る

2015.2.2 掲載
原油価格が急落しています。1バレル100ドル前後で推移していた原油価格は2014年夏から下落し始め、15年1月には40ドル台にまで落ち込みました。米国で新たな原油「シェールオイル」の生産量が急増する一方で、新興国や欧州の景気減速により需要が減っていることが原因です。原油安は企業や家計の負担減につながり世界経済に追い風となりますが、資源輸出に依存する国の経済を悪化させ、世界の金融市場の動揺を招く可能性もあります。今回は原油価格の基礎や最近の価格動向、原油安の背景と影響などについて解説します。

5.原油安は日本経済に恩恵、世界経済には悪影響も

 原油安は多くの企業に恩恵をもたらします。火力発電に重油を使う電力業界や、燃料にガソリンなどを使う運輸業界・航空業界などの収益拡大につながりますし、製造工程で原油を大量に使う製紙業界などの業績に追い風となります。ガソリン代が下がれば家計の負担も軽減します。原油安は消費国である先進国の景気を下支えし、世界経済にとって恩恵が大きいといえます。原油のほとんどを輸入に頼る日本経済にもよい影響が期待できます。
 半面、下落が長期化すれば、資源輸出への依存度が高い産油国の経済に打撃を与える可能性があります。なかでも悪影響が大きいとみられるのが、国の歳入の4割を原油と天然ガス輸出など石油関連収入でまかなうロシアです。14年12月には、ロシア経済の先行きに対する懸念から、通貨のルーブルが売られて急落。その他の新興国の通貨や株式を売る動きも広がり、今後も世界の金融市場が動揺する恐れがあります。
 ロシアや中東などの産油国が経済的に立ちゆかなくなれば、地域の政情不安を招き、世界経済にも悪影響を与えかねません。原油安は日本にとっては慈雨と言えますが、世界の経済にはリスクがあることも頭に置いておく必要がありそうです。
2015年2月2日掲載