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原油価格の基礎と最新動向を知る

2015.2.2 掲載
原油価格が急落しています。1バレル100ドル前後で推移していた原油価格は2014年夏から下落し始め、15年1月には40ドル台にまで落ち込みました。米国で新たな原油「シェールオイル」の生産量が急増する一方で、新興国や欧州の景気減速により需要が減っていることが原因です。原油安は企業や家計の負担減につながり世界経済に追い風となりますが、資源輸出に依存する国の経済を悪化させ、世界の金融市場の動揺を招く可能性もあります。今回は原油価格の基礎や最近の価格動向、原油安の背景と影響などについて解説します。

2.世界に3つの主要な原油市場

2.世界に3つの主要な原油市場
 原油の量の単位は「バレル」(1バレルは約159リットル)です。バレルは英語で「たる」を指し、昔は原油をたるに入れて運んだため原油の量の単位として使われるようになりました。
 原油を産出する地域は世界の一部に限られており、主に北米、北海(欧州)、中東(アジア)の3カ所で産出し、それぞれの消費地ごとに取引市場があります。北米ではニューヨークのマーカンタイル取引所、欧州ではロンドンのインターコンチネンタル取引所で決まる価格がそれぞれの市場での値決めの基準となります。どちらも現物の原油の取引価格ではなく、将来のある期日に現物を買える権利を売買する先物取引の価格です。アジアでは石油会社や商社が売買する現物市場の価格が値決めの基準です。なお、ニューヨークと比べると取引量は小さいですが、東京商品取引所でも原油の先物取引がされています。
 ニューヨーク市場で取引される主要な原油は米テキサス州で産出するWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で、ロンドン市場は北海で出るブレント原油、アジア市場では中東のドバイやオマーン産が主に扱われます。なかでもWTIの先物取引量は世界で最も多く、他の市場の価格形成にも影響を及ぼす原油価格の国際指標になっています。
 日本は原油のほぼ全量を輸入に頼っており、その8割以上が中東産で、大半はサウジアラビアなど産油国との直接取引です。価格は現物市場のドバイ原油とオマーン原油の平均価格を参考に毎月決めています。
 主に市場の取引によって世界の原油価格が決まるようになったのはそれほど昔のことではありません。1930年代以降、原油生産から精製、石油製品の販売まで一貫した事業を全世界で展開する、石油メジャーと呼ばれる欧米の大手石油会社が原油価格の決定に強い影響力を持っていました。1970年代には中東などの主要産油国がメジャーに対抗するために組織した石油輸出国機構(OPEC)が価格決定の主導権を握ります。OPECが原油価格を引き上げ、生産量を減らした、いわゆる「オイルショック」に見舞われたのはこの頃です。80年代に入ると、OPECに加盟しない国の生産拡大などのため、原油取引と価格形成の主役は市場に代わりました。
2015年2月2日掲載