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消費税率、来春8%に引き上げ~増税の経緯と影響について知る

2013.12.16 掲載
消費税率が2014年4月から8%に引き上げられます。財政再建へ道筋をつけるのが目的ですが、駆け込み需要により住宅や自動車など高額品の販売が伸びるなど、国内消費に影響を及ぼします。増税分を製品やサービスの価格に上乗せすれば販売減少につながるおそれがあることから、どの程度転嫁するか、端数処理をどうするかなど、企業は難しい判断を迫られます。今回は消費税導入と税率引き上げの経緯のほか、消費増税への企業の対応、暮らしや経済への影響などについて解説します。

4. 政府は下振れリスクを警戒、社会保障改革も待ったなし

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 ただし、増税後には駆け込み需要の反動減が避けられません。上向いている景気を腰折れさせるおそれもあります。もともと消費税率を2段階で引き上げることになったのも、経済への打撃を少しでも和らげようとの狙いからでした。経済状況によっては15年の引き上げは見送られる可能性があります。安倍政権は消費増税による反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するため、法人減税や低所得者・住宅購入者向けの現金給付などを柱とする5兆円規模の経済対策を打ち出しています。
 生活必需品などの生きていくために最低限必要なものへの支出の割合は低所得者ほど高く、消費税率引き上げの負担感が強くなる傾向があります。これを「消費税の逆進性」といい、対応策として生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」の導入案が浮上しています。消費税を導入する国の多くが食料品などに対して軽減税率を適用しています。14年4月の引き上げ時の導入は見送られましたが、15年の引き上げに向けて導入論議が活発化しています。ただ、適用品目が少なすぎると逆進性を解消する効果が小さく、多すぎれば税収が増えない悩ましい問題があります。
 財政再建のために実施される消費増税ですが、そもそもこれだけで膨張し続ける社会保障費をまかなうことは不可能で、同時に年金給付の抑制や医療費の高齢者負担増などの社会保障制度の見直しが欠かせません。国民の痛みを伴う改革だけに、実現には政治の強いリーダーシップが求められます。景気回復と財政再建の両立という難題解決に向け、安倍政権の今後の手腕が問われます。
2013年12月16日掲載