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消費税率、来春8%に引き上げ~増税の経緯と影響について知る

2013.12.16 掲載
消費税率が2014年4月から8%に引き上げられます。財政再建へ道筋をつけるのが目的ですが、駆け込み需要により住宅や自動車など高額品の販売が伸びるなど、国内消費に影響を及ぼします。増税分を製品やサービスの価格に上乗せすれば販売減少につながるおそれがあることから、どの程度転嫁するか、端数処理をどうするかなど、企業は難しい判断を迫られます。今回は消費税導入と税率引き上げの経緯のほか、消費増税への企業の対応、暮らしや経済への影響などについて解説します。

3. 端数処理や表示方法など、企業により異なる対応(2)

3. 端数処理や表示方法など、企業により異なる対応(2)
 小売りでは、これまで税込みで表示する「総額表示(内税方式)」が義務づけられていましたが、増税分を円滑に価格転嫁する狙いから17年3月31日までの特例措置として「税抜き本体価格(外税方式)」での表示が認められました。これを受け食品スーパーの業界団体では税抜き表示を基本とする方針です。セブン&アイ・ホールディングスも税抜き価格中心の表示を決定、家電量販店ではヤマダ電機が税抜き表示に切り替える方針を明らかにしています。小売業界は価格競争が激しく、増税で見た目の価格が上がり、商品自体が値上がりしたと消費者に誤解されるのを避ける狙いから税抜き表示が主流になりそうです。消費税が15年に10%に引き上げられる可能性があるので、値札をかえる手間やコストを抑える意味合いもあります。
 ただ、税込み表示になじんだ消費者にとって、すべてが一斉に税抜き表示になると混乱しかねませんし、税込みの支払額が一目でわかる総額表示を求める消費者もいます。増税後しばらくは税抜き価格と税込み価格を併記する店も多そうです。日本百貨店協会は現行の総額表示と本体価格のみの表示を併用するとしています。家具のニトリホールディングスのように、増税分を価格に転嫁せずに従来通り税込み表示とする方針の小売りもあります。
 消費者が価格に敏感に反応しやすい低価格の外食業は、消費増税への対応に苦慮しています。牛丼店では大手3社が並盛り280円で並び、この価格が消費者に定着しています。しかし市場全体が低迷し、コメや牛肉などの材料価格が高止まっていることから、各社ともできるだけ増税分を価格転嫁したいのが本音です。象徴的な280円という価格を変更するのか、あるいは価格を変えずに他のメニューの見直しなどで減収分を補うのか、各社は難しい決断を迫られています。ラーメン店やファストフード店も事情は同じです。
 近年は消費者の低価格志向が強まっているため、今回の増税前の駆け込み需要は前回97年の増税時と比べて1.7倍に増え、9兆3000億円に上るとの民間試算もあります。増税直前には日用品や食品のまとめ買いも本格化しそうです。
 住宅や自動車などの高額品ではすでに駆け込み需要が表れています。注文住宅は13年9月までに契約すれば14年4月以降も現行の消費税率が適用されるため、7~9月期の国内総生産(GDP、速報値)の住宅投資は前期比2.7%増えました。自動車各社は駆け込み需要を見込んで増産に動いています。
2013年12月16日掲載