ただ、最高裁判決はネット販売という手法の是非そのものについては判断しておらず、全面解禁を容認したわけではありません。厚労省は医薬品のネット販売には一定のルールが必要との立場から、ネット通販業者、薬剤師団体、薬害被害者などで構成する検討会で新たなルールについて議論しています。
ルールづくりの最大の焦点はネットで販売できる薬の線引きです。薬剤師団体と薬害被害者団体はネット販売そのものに反対の立場で、与党の議員の間にも「少なくとも1類の販売は禁じるべき」との慎重論があります。これに対し、ネット通販業者は薬の種類による規制には反発しています。厚労省は検討会で数カ月以内に結論を出し、今国会に薬事法改正案を提出する考えですが、意見の隔たりが大きいことからルールの整備は遅れる可能性もあります。
ネット上で医薬品の適正な使い方や副作用の情報をどのように伝え、買い手の健康状態をどう把握するのかなど、ネット販売がクリアしなければならない課題は数多くあります。ネット通販の再開により消費者の利便性は高まりますが、通販サイトの利用は買い手の判断に依存するところが大きいのも事実です。利便性と安全性を両立させた医薬品のネット販売体制を確立するためには、国や関連業界はもちろん、国民ひとり一人が医薬品の購入・利用におけるリスクを十分に認識し、議論を深めていくことが求められます。