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社会インフラの老朽化問題について知る!

2013.3.18 掲載
2012年12月に起きた中央自動車道の笹子トンネルの天井崩落事故をきっかけに、社会インフラの老朽化問題への関心が高まっています。トンネルだけでなく、道路や橋、上下水道など高度経済成長期につくられた社会インフラの修理・改築が日本全体の喫緊の課題となっていますが、国や自治体の財政状況は厳しく、民間の力を取り入れたり利用状況に応じてインフラを統廃合するなど維持・管理にかかるコストを極力減らす工夫が求められます。今回は、日本における社会インフラの概要、どのように整備・維持管理されているのか、国や自治体の老朽インフラ対策と課題などについて解説します。

3. 一斉に老朽化する日本の社会インフラ

3. 一斉に老朽化する日本の社会インフラ
 日本では社会インフラの新設が減る一方で、既存の社会インフラの老朽化が国全体の大問題となっています。日本では1960年代の高度経済成長期に、道路や上下水道、橋、学校などの社会インフラが一斉に建設されましたが、その多くが耐用年数とされる50年を超え、建て替えの時期を迎えているためです。2011年度の国土交通白書では、建設後50年以上経過した社会インフラの割合を2010年度現在と20年後で比較すると、道路橋は8%から53%、水門など河川管理施設は23%から60%、下水道は2%から19%、港湾岸壁は5%から53%へと急増すると推計しています。
 設備が老朽化するとコンクリートのひび割れや部品のさび、摩耗などにより壊れやすくなります。財政難のため、じつは2000年代以降は既存インフラの改築、補修に充てる予算も抑制されてきましたが、このまま老朽化を放置すれば重大な事故を引き起こしかねません。
 すでにその懸念は現実のものとなっています。2012年12月、中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)で天井が崩落して、多数の死傷者を出す大事故が発生しました。このトンネルは35年前にできたもので、老朽化により天井板を固定していたネジなどの部品がもろくなり事故につながったと見られています。同年7月には大阪・堺市で水道管が破裂して3万世帯以上が断水しました。これも40年以上前に敷設されたもので、もともと2センチほどあったはずの水道管の厚さは腐食と摩耗により数ミリになっていました。
 古い社会インフラが地震などの災害の被害を拡大することも懸念されています。2011年3月11日の東日本大震災では、福島県で60年以上前にできたダムが崩壊したり、茨城県霞ヶ浦に40年以上前にかけられた鹿行(ろっこう)大橋の橋げたが崩れ落ちるなどして、死者を出しました。
2013年3月18日掲載