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社会インフラの老朽化問題について知る!

2013.3.18 掲載
2012年12月に起きた中央自動車道の笹子トンネルの天井崩落事故をきっかけに、社会インフラの老朽化問題への関心が高まっています。トンネルだけでなく、道路や橋、上下水道など高度経済成長期につくられた社会インフラの修理・改築が日本全体の喫緊の課題となっていますが、国や自治体の財政状況は厳しく、民間の力を取り入れたり利用状況に応じてインフラを統廃合するなど維持・管理にかかるコストを極力減らす工夫が求められます。今回は、日本における社会インフラの概要、どのように整備・維持管理されているのか、国や自治体の老朽インフラ対策と課題などについて解説します。

1. 産業や生活の基盤として整備される施設

1. 産業や生活の基盤として整備される施設
 インフラストラクチャー(infrastructure=インフラ)はラテン語を語源とする英語で、産業や生活の基盤として整備される施設を意味する言葉です。道路・鉄道・上下水道・送電網・港湾・ダム・通信網といった産業基盤となる施設のほか、生活基盤となる学校・病院・公園・公営住宅なども含まれます(本稿では公共性の高い施設・設備という意味で、総称して社会インフラという呼称を用います)。
 社会インフラは、長期にわたって人々の快適な暮らしを支え、地域の経済活動を活発にする役割を果たします。はるか昔から、社会インフラの整備は国や地域の発展を左右する重要な事業でした。歴史上、社会インフラ整備によって栄えた国としてよく知られるのが古代ローマ帝国です。古代ローマ人は、人や物がひんぱんに行き来できるよう征服した土地を網の目のように街道で結んだほか、各地に橋、水道、湾、円形闘技場、公共浴場などのさまざまな社会インフラをつくりました。これにより一大経済圏を築くことで、巨大な版図の平和と安定を実現したのです。当時の街道や水道などの一部は現在でも使われており、古代ローマ人は「インフラの父」とも呼ばれています。
 社会インフラ事業は民間の事業としては成り立ちにくいため、通常は国や地方自治体、公的な企業により整備・運営されます。例えば日本の道路の場合、国内の重要都市を結ぶ主要な道路(一般国道)は国が、高速道路は旧道路公団を前身とする各高速道路会社が、そのほかの道路は自治体が整備・運営を担っています。
2013年3月18日掲載