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社会インフラの老朽化問題について知る!

2013.3.18 掲載
2012年12月に起きた中央自動車道の笹子トンネルの天井崩落事故をきっかけに、社会インフラの老朽化問題への関心が高まっています。トンネルだけでなく、道路や橋、上下水道など高度経済成長期につくられた社会インフラの修理・改築が日本全体の喫緊の課題となっていますが、国や自治体の財政状況は厳しく、民間の力を取り入れたり利用状況に応じてインフラを統廃合するなど維持・管理にかかるコストを極力減らす工夫が求められます。今回は、日本における社会インフラの概要、どのように整備・維持管理されているのか、国や自治体の老朽インフラ対策と課題などについて解説します。

4. 民間活用や「選択と集中」など、維持・管理コストを減らす努力が不可欠

4. 民間活用や「選択と集中」など、維持・管理コストを減らす努力が不可欠
 笹子トンネル事故を受け、国交省は道路や港湾、堤防、鉄道施設などの点検を急いでおり、必要があれば補強や改築などの対策を早急に実施する方針です。2012年12月に誕生した安倍政権も社会インフラの老朽化対策を軸に公共事業への重点的な投資を掲げています。2013年度の国の予算案では、公共事業関係費を2012年度当初予算より7000億円増額し、5.3兆円程度を計上。全国各地にある道路、トンネルの補修や河川改修など老朽インフラ対策に重点的に配分する計画です。
 ただし老朽化対策が重要であるとはいえ、国や自治体の財政がひっ迫する中で際限なくお金を投じることはできません。既存の社会インフラの中には、少子高齢化に伴って今後の利用が減少していくものがあります。例えば学校や児童館などに関しては、地方自治体が維持管理費や利用状況を公表し、存廃を含めた施設のあり方を住民と協議するという例が出ています。簡単ではありませんが、維持・管理にかかるコストをなるべく減らすため利用の減った橋を統廃合するなど、地域の住民と話し合いながら「選択と集中」の考え方をさまざまな社会インフラに適用していくことが必要かもしれません。もちろん低コストで安全性を確保できる新しい補修技術・工法を採用することも重要です。
 これから整備する社会インフラについても、維持・管理コストを減らす努力が不可欠です。例えば「PFI」(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)の積極的な活用です。PFIとは社会インフラの建設から維持管理、運営などを、民間の資金、経営ノウハウ、技術を活用して実施する手法のことで、国が実施する場合に比べ、民間の創意工夫により品質を保ちつつ維持・管理コストを抑えることが期待できます。このほか、都市部に人口を集中させる「コンパクトシティー」化を促進したり、複数の自治体が公共サービスを共同で実施するなど、社会インフラの大幅な圧縮につながるような抜本的な対策も重要です。
 従来の社会インフラが老朽化を迎えているというだけでなく、少子高齢化・人口減少など社会構造が大きく変化する中で、生活に直接関わる問題として社会インフラのあるべき姿について議論を深めなければなりません。懐事情が厳しい国や自治体には、これまでとは違う新しい発想での社会インフラ整備が求められています。
2013年3月18日掲載