カントリーリスクが顕在化した最近の具体例としては、民主化に伴う中東地域の政情不安の拡大があります。2011年2月、北アフリカのチュニジアで起こった民主化革命の波が中東の大国・エジプトにも飛び火し、大規模な反政府デモが発生して混乱に陥りました。このため同国での工場建設や販社設立計画の見直しを迫られるなど日本企業の事業活動にも影響が出ました。
一般に、新興国は先進国に比べて高い経済成長や高金利が見込める分、政情や経済基盤が不安定でカントリーリスクが高いとされます。実際、90年代頃までは新興国におけるカントリーリスクが注目されがちでしたが、2000年代以降は先進国のカントリーリスクへの関心が高まっています。例えば09年10月にギリシャの深刻な財政赤字が発覚したのをきっかけに、国債のデフォルト懸念が拡大。ギリシャ国債相場が下落したほか、ユーロ相場や株価が急落するなど金融市場が大きく混乱しました(欧州債務危機)。この影響はポルトガル、イタリア、スペインといった財政が不安視されている他のユーロ加盟国にも波及しており、欧州経済全体に影を落としました。このことは日本の自動車や電機といった輸出関連企業の収益を大きく圧迫する要因となっています。