ビジュアル・ニュース解説

「カントリーリスク」ってどんなもの?

2013.1.21 掲載
欧州債務危機の発生や中東の政情不安の拡大などにより、特定の国・地域における政治・経済・社会情勢の変化により企業が損失を被るリスク、いわゆる「カントリーリスク」に対する関心が高まっています。特に中国に進出する日本企業の間では、生産活動や収益を中国に過度に依存するリスクが強く意識されるようになり、生産拠点を東南アジアに分散する動きが広がっています。今回はカントリーリスクとは何か、カントリーリスクが増大した過去の例、企業の対応策などについて解説します。

1. 特定の国・地域における政治・経済・社会情勢などに起因するリスク

1. 特定の国・地域における政治・経済・社会情勢などに起因するリスク
 カントリーリスクとは、企業が外国の事業に投融資したり貿易取引をする際に、相手国・地域の政治や社会、経済状況の変化に伴い、損失を被ったり資金が回収できなくなったりする危険性の度合い(リスク)のことです。具体的な要因は、急激なインフレや通貨の急落、国債の債務不履行(デフォルト=元利金の支払いができなくなること)、政権交代による経済・通商政策の変更、戦争や内乱に伴う政治の不安定化などが代表的ですが、そのほか法制や税制の解釈・運用の相違、商慣行やマナーの違い、外国企業に対する国民感情などがリスク要因になることもあります。
 企業の事業活動においては、市場動向の変化により計画通りの収益が得られなくなったり、取引先企業の経営・財務状態の悪化により売掛金が回収できなくなったり、技術的・人為的なミスで製品・サービスの質が低下してしまうなど、さまざまなリスクが発生します。カントリーリスクは、こうした個別の事業リスクへの対応が万全だったとしても、その国・地域の社会情勢の変化などによって否応なく影響を受けるリスクといえます。
 例えば、ある国で日本企業が石油や天然ガスなどの資源採掘事業を手がけた場合、たとえその事業自体は健全であっても、その国の政府が海外への資源輸出を制限する通商政策をとれば、企業は期待した収益を得られなくなる可能性があります。また、インフレの進行や為替相場の変動により相手国の通貨価値が大幅に下落すれば、その国に投資していた企業は配当や利息、代金の受取額が目減りしてしまいます。これまで外国企業の進出を積極的に受け入れていた国であっても、革命やクーデターによって政治体制が一変すれば、新政府が外国企業の工場を国有化したりその金融資産を没収することも考えられます。
2013年1月21日掲載