企業のカントリーリスクへの対応としては、リスクを分散することも重要です。一国に生産拠点を集中したり収益を大きく依存したりすれば、その国の情勢の急変により大きな損失を被るおそれがあります。
最近の日本企業の間では、中国に生産拠点を集中することのリスクが強く意識されつつあります。
これまで製造業を中心に、多くの日本企業が豊富で安価な労働力を求めて中国に進出してきました。しかし近年は農村からの出稼ぎ労働者の不足により人件費が高騰しているほか、待遇改善を求める労働争議が急増しています。さら12年には尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化をきっかけに反日デモが中国各地で発生し、日本企業の工場では中国人従業員による職務放棄が相次ぎました。このため最近では東南アジアに生産拠点をシフトする日本企業が増えています。こうした経営戦略は「チャイナプラスワン」と呼ばれます。ただし、一つの国に生産を集中させることには効率的に生産コストを引き下げられるなどのメリットがあるのも事実です。どれだけ生産拠点の分散を進めるかは難しい経営判断といえます。
グローバル化が進んだ結果、企業だけでなく個人にもさまざまな国のカントリーリスクの影響が及ぶようになっています。新興国通貨による外貨預金や、こうした国の債券や株式を多く組み入れた投資信託は資産運用の手段として定着しており、カントリーリスクはその運用成果も大きく左右します。カントリーリスクに目を向けることの重要性は今後ますます高まっていきそうです。