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「地熱発電」の現状と課題について知る!

2012.7.16 掲載
天候に左右されず安定的に発電できる再生可能エネルギーとして注目される地熱発電。火山国である日本は、これまで豊富な地熱資源がありながら導入が進んでいませんでした。しかし、電力不足を背景に開発規制が緩和され、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まったことで開発計画が相次いでいます。今回は地熱発電のしくみ、関連企業の動向、今後の課題などについて解説します。

豊富な資源量を誇る火山国・日本

豊富な資源量を誇る火山国・日本
 火力発電が燃料(石油や石炭、液化天然ガス)を輸入に頼っているのに対して、地熱発電は国内の地熱資源を用いるという点で「純国産エネルギー」といえます。しかも日本は世界有数の火山大国であり、米国、インドネシアに次ぐ世界3位の地熱資源量(発電出力換算)を有します。その発電能力は国内全体の約1割強に相当する約2400万キロワットにも上ります。
 安定的な稼働も地熱発電の特長の一つです。再生可能エネルギーのうち太陽光や風力は天候や時刻に出力が左右されるという欠点があり、設備利用率は太陽光が約12%、風力が約20%にとどまります。これに対して、地熱発電の出力は天候に関係なく終日の稼働も可能で、設備利用率は原発並みの約70%に達します。発電時の二酸化炭素の排出量がほぼゼロと環境負荷が小さいのも魅力です。
 このように有力なエネルギーでありながら、国内ではこれまであまり導入が進んできませんでした。地熱資源量の約8割が国立・国定公園などの自然公園内にあり、環境破壊への懸念などから開発が厳しく規制されてきたためです。地熱発電で利用する熱水は温泉と同じであるため、温泉事業者などの間で枯渇を心配する声が根強かったことも導入が遅れる一因となりました。国内では1999年に東京電力が東京・八丈島で地熱発電所を操業開始したのを最後に、商用発電所の新設は途絶え、現在操業している発電所は18カ所、設備容量は約54万キロワット(2010年時点)で、全発電設備容量に占める割合は1%以下にとどまります。
2012年7月16日掲載