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ウクライナ侵攻でエネルギーの脱ロシア依存加速

2022.7.4 掲載
2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻に対し、米欧日などは経済制裁を発動。その一環として、ロシア産の石油や石炭などエネルギーの輸入禁止を打ち出しました。これまで欧州を中心に多くの国がロシア産の石油や天然ガスを輸入していましたが、今回のロシアの侵攻をきっかけに、エネルギー安全保障の観点から「脱ロシア産」を目指す機運が高まっています。今回はロシア産のエネルギー依存解消を巡る各国の対応や課題について解説します。

1.ロシアのエネルギー輸出に打撃、侵攻の戦費枯渇狙う

1.ロシアのエネルギー輸出に打撃、侵攻の戦費枯渇狙う
 ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁として、米国は2022年3月にロシア産の石油、天然ガス、石炭の輸入を禁止。これに続き、欧州連合(EU)は22年4月にロシア産石炭の輸入禁止、同年5月には陸上パイプライン経由の一部を除き石油を同年内に禁輸し、輸入全体の9割を止めることでそれぞれ合意しました。主要7カ国(G7)も同月、日本を含めてロシア産石油を禁輸する方針で一致しました。
 ロシアの原油生産量は世界3位、天然ガスは2位です。ロシア中央銀行によると、同国の21年の石油・ガス輸出額は約2440億ドル(約33兆円)に上ります。ロシアの連邦政府歳入は石油と天然ガス関連が4割程度を占めており、経済制裁によって重要な外貨獲得手段であるエネルギー輸出に打撃を与えることでウクライナ侵攻の戦費を枯渇させるのが狙いです。
 EUはロシア産のエネルギーへの依存度が高く、20年には天然ガス輸入の4割、石油の4分の1をロシアに頼っていました。米エネルギー情報局(EIA)によると、ロシアが輸出する天然ガスの74%、石油の49%が欧州向けでした。ロシアとの関係が悪化するなか、ロシア産のエネルギー依存のリスクが高まっており、ロシアがエネルギー供給を突然止める可能性が現実味を帯びています。ロシアのエネルギー供給が止まれば、市民の生活や経済に大きな影響が出ます。実際にロシア国営ガスプロムは22年4月、ロシアが求める通貨ルーブルでの代金支払いに応じなかったとして、ポーランドとブルガリアへの天然ガスの供給を停止。同年5月にはフィンランドとオランダ、同年6月にはデンマークとドイツの一部へのガス供給を止めました。
2022年7月4日掲載