EUの欧州委員会は22年5月、ロシア産エネルギーからの脱却に向けた計画案を公表しました。計画案は温暖化ガス排出削減との両立を目指しており、再生可能エネルギーのエネルギー消費に占める割合を30年に従来目標の32%から45%に引き上げるほか、30年までに再生エネから水素を1000万トンつくるとともに、輸入量も1000万トンにします。エネルギー消費の削減目標を従来の9%から13%に引き上げて省エネを加速。エネルギー供給の多様化に向けて、エジプトやナイジェリアなどの産ガス国との対話を強化し、液化天然ガス(LNG)の輸入も拡大します。これを実現するために27年までに官民で2100億ユーロ(約29兆円)を投資するとしています。
日本はロシア産のエネルギーについて、22年4月の石炭に続き、同年5月には石油の輸入を原則禁止しました。21年に輸入したロシア産のエネルギーの比率は石炭が11%、石油は3.6%で、EUより低い水準です。しかし、原油は輸入量の9割が中東からで、ロシア産の輸入はエネルギー調達先拡大の一環だったため、さらに中東への依存が進めばエネルギー調達のリスクが高まります。ロシアからの原油の調達はサハリンでの資源開発事業「サハリン1」で採掘されるものが輸入量の4割程度、それ以外の多くはロシアの石油会社からの随時契約です。サハリン1は経済産業省、伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、INPEXが出資するサハリン石油ガス開発(SОDECО)が30%の権益を持っており、サハリン1からの原油の購入代金はSОDECОの収益になりますが、SОDECОは権益の対価として売り上げの一部をロシア側に支払っています。政府はサハリン1の権益を維持する方針で、ロシアの資源開発への協力を続けることになります。