ビジュアル・ニュース解説

ウクライナ侵攻でエネルギーの脱ロシア依存加速

2022.7.4 掲載
2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻に対し、米欧日などは経済制裁を発動。その一環として、ロシア産の石油や石炭などエネルギーの輸入禁止を打ち出しました。これまで欧州を中心に多くの国がロシア産の石油や天然ガスを輸入していましたが、今回のロシアの侵攻をきっかけに、エネルギー安全保障の観点から「脱ロシア産」を目指す機運が高まっています。今回はロシア産のエネルギー依存解消を巡る各国の対応や課題について解説します。

2.エネルギー調達のリスク高まる日本

2.エネルギー調達のリスク高まる日本
 EUの欧州委員会は22年5月、ロシア産エネルギーからの脱却に向けた計画案を公表しました。計画案は温暖化ガス排出削減との両立を目指しており、再生可能エネルギーのエネルギー消費に占める割合を30年に従来目標の32%から45%に引き上げるほか、30年までに再生エネから水素を1000万トンつくるとともに、輸入量も1000万トンにします。エネルギー消費の削減目標を従来の9%から13%に引き上げて省エネを加速。エネルギー供給の多様化に向けて、エジプトやナイジェリアなどの産ガス国との対話を強化し、液化天然ガス(LNG)の輸入も拡大します。これを実現するために27年までに官民で2100億ユーロ(約29兆円)を投資するとしています。
 日本はロシア産のエネルギーについて、22年4月の石炭に続き、同年5月には石油の輸入を原則禁止しました。21年に輸入したロシア産のエネルギーの比率は石炭が11%、石油は3.6%で、EUより低い水準です。しかし、原油は輸入量の9割が中東からで、ロシア産の輸入はエネルギー調達先拡大の一環だったため、さらに中東への依存が進めばエネルギー調達のリスクが高まります。ロシアからの原油の調達はサハリンでの資源開発事業「サハリン1」で採掘されるものが輸入量の4割程度、それ以外の多くはロシアの石油会社からの随時契約です。サハリン1は経済産業省、伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、INPEXが出資するサハリン石油ガス開発(SОDECО)が30%の権益を持っており、サハリン1からの原油の購入代金はSОDECОの収益になりますが、SОDECОは権益の対価として売り上げの一部をロシア側に支払っています。政府はサハリン1の権益を維持する方針で、ロシアの資源開発への協力を続けることになります。
2022年7月4日掲載