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ウクライナ侵攻でエネルギーの脱ロシア依存加速

2022.7.4 掲載
2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻に対し、米欧日などは経済制裁を発動。その一環として、ロシア産の石油や石炭などエネルギーの輸入禁止を打ち出しました。これまで欧州を中心に多くの国がロシア産の石油や天然ガスを輸入していましたが、今回のロシアの侵攻をきっかけに、エネルギー安全保障の観点から「脱ロシア産」を目指す機運が高まっています。今回はロシア産のエネルギー依存解消を巡る各国の対応や課題について解説します。

3.脱ロシア化遅れる石油、難しい天然ガス

3.脱ロシア化遅れる石油、難しい天然ガス
 欧米諸国などのロシア産エネルギーの調達自粛や禁輸により、原油や天然ガス、石炭の価格は高騰しています。22年3月にロンドン市場で北海ブレント原油先物が1バレル139.13ドルまで上昇して史上最高値に迫る水準に達したほか、日本を含むアジアのLNGスポット価格を示すJKМ(ジャパン・コリア・マーカー)は100万BTU(英国熱量単位)当たり84.76ドルの過去最高値を記録。オーストラリア産の一般炭(発電用など)、原料炭(製鉄用など)の価格も大幅に上昇しました。
 世界各地で産出し、代替輸入先の確保が比較的容易な石炭の脱ロシア化は進んでいますが、石油は遅れています。石油需給の逼迫感が強まったにもかかわらず、石油輸出国機構(OPEC)とOPEC非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が当初、増産に消極的だったためです。OPECプラスは22年6月になってようやく増産拡大を決めました。天然ガスの脱ロシア産化はさらに困難です。欧州諸国は主にパイプラインを使って陸路でロシアから天然ガスの供給を受けてきましたが、今後は海路を通じてLNGを輸入しなければならず、輸出基地と輸入基地の整備が必要です。ドイツは22年6月、天然ガスの消費を抑えるため石炭火力発電の稼働を増やす緊急措置を決めました。
 日本はLNG調達で欧州と比べて長期契約の比率が高く、スポット契約の比率が低くなっています。ロシアからのLNG輸入を止めれば、調達先の変更だけでなく、長期からスポットへの調達契約の変更をともなうことが多くなり、コストが上昇して大きな打撃を受けます。火力発電の燃料であるLNGの高騰は電気代の上昇につながり、市民生活に大きな影響が出ます。
2022年7月4日掲載