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世界で半導体の不足深刻、車の減産に波及

2021.6.21 掲載
パソコンやスマートフォン、自動車などの生産に欠かせない半導体の不足が世界で続いています。とりわけ自動車向けの不足は深刻で、調達できない自動車メーカーの減産が相次ぎました。今回は半導体不足が続く背景やその影響、今後の見通しなどを解説します。

2.日米の半導体工場の生産一時停止が追い打ち

2.日米の半導体工場の生産一時停止が追い打ち
 この状況に追い打ちをかけたのが半導体大手の工場の生産一時停止です。21年2月に米テキサス州を襲った大寒波による停電で、スマホ向け半導体などで5%の世界シェアを持つ韓国サムスン電子の現地工場が操業を停止したほか。車載用半導体の合計売上高で世界首位の独インフィニオンテクノロジーズと同2位のオランダNXPセミコンダクターズの工場が操業を止めました。国内でも同年3月、車載向けが3分の1を占めるマイコンで約2割の世界シェアを持つルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生して生産を停止し、日本の自動車メーカーなどに影響が広がりました。
 自動車メーカーは半導体不足で減産を余儀なくされています。トヨタ自動車は21年6月に国内の2工場3ラインで生産を停止し約2万台減産。ホンダは同年5月に国内3工場の稼働を5、6日停止し、日産自動車も一部工場の稼働日数を減らしました。SUBARU(スバル)は同年3~4月に国内外で約2万5000台、三菱自動車も同年5月に国内外で1万6000台それぞれ減産しました。自動車の減産規模は21年の世界生産見込みの約3%にあたる240万台に上る可能性が指摘されています。
 ルネサスは21年5月末までに、那珂工場の半導体の生産能力を火災の前の88%まで回復させるとともに、100%に復帰のために必要な装置すべての調達を完了。同年7月上旬をめどに出荷量を火災前と同じまで回復させる計画です。サムスン電子の米工場は各工程が正常に作動するよう調整するための少量生産を始めており、21年6月以降に出荷量が停止前の水準に戻る見通しです。インフィニオンも同月には出荷量が停止前の水準まで戻るとしています。
 しかし、停電や火災など一時的な要因による供給停止が解消しても、半導体不足はこれらの災害や事故が起きる前から表面化しているため需要の急拡大に供給が追いつかない状況はまだ続きそうです。
2021年6月21日掲載