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世界で半導体の不足深刻、車の減産に波及

2021.6.21 掲載
パソコンやスマートフォン、自動車などの生産に欠かせない半導体の不足が世界で続いています。とりわけ自動車向けの不足は深刻で、調達できない自動車メーカーの減産が相次ぎました。今回は半導体不足が続く背景やその影響、今後の見通しなどを解説します。

1.米の対中制裁や車生産の急回復で需給ひっ迫

1.米の対中制裁や車生産の急回復で需給ひっ迫
 半導体は金属などの電気を通す「導体」と通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質や、それで作った部品です。部品の「半導体集積回路」にはスマートフォンやパソコンの頭脳となるプロセッサー、データを記憶するメモリーなどがあり、家電製品や医療機器などにも組み込まれています。電子化が進んだ自動車には走る、止まるといった動きをコントロールするマイコンや、電力を制御するパワー半導体が数多く使われています。高速通信の新規格「5G」に対応する機器や人工知能(AI)に必要な高機能の半導体など、新たな需要も伸びています。主要メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)によると、世界の半導体市場規模は2021年に前年比19.7%増の5272億ドル(約57兆円)となり、3年ぶりに過去最高を更新する見通しです。
 半導体不足が本格化したのは20年秋です。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が安全保障上の問題があるとして米国から制裁を受けるなか、同社は制裁を控えて半導体を大量に確保し、競合するスマホメーカーもシェアを拡大するため半導体を活発に調達。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で在宅需要が膨らんだことによるパソコンやゲーム機、スマホ向けの旺盛な需要が重なりました。新型コロナの感染拡大による新車販売の落ち込みで20年春にそろって減産し、車載半導体の注文を減らした自動車メーカーも、世界市場の回復で20年秋から急きょ生産を増やして半導体の注文を拡大したため半導体需給はひっ迫しました。
 しかし、半導体は完成まで3カ月以上かかることもあり、すぐに生産量を増やせません。そこで半導体メーカーは台湾積体電路製造(TSMC)など台湾の受託生産会社(ファウンドリー)に車載半導体の生産を委託しました。ただ、ファウンドリーはパソコンやゲーム機、スマホ向けの高機能半導体の生産で余裕がなく、一般的で利幅が薄い車載用の生産は後回しにされがちで、特に車載用の半導体不足が深刻化しました。
2021年6月21日掲載