新型コロナウイルスの感染拡大で、訪日客は入国制限によってほぼゼロになり、国内の都道府県をまたぐ移動自粛で観光産業は一気に苦境に陥りました。政府や自治体などは観光需要の回復による地方の活性化に向けて、ワーケーションを推進する施策を展開しています。
政府は20年7月の観光戦略実行推進会議で、ワーケーションを「新しい旅行や働き方のスタイルとして支援していく」と宣言。これに呼応して日本を代表するリゾート地の沖縄県は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら来県を促すための水際対策として、那覇空港にある旅行者相談センターを離島の空港にも設置し、発熱者の検知や検査体制の強化に取り組みます。政府は20年度、沖縄での宿泊施設内のワーケーション向け共用オフィス整備などへの補助事業として3億円を超す予算を確保しています。
沖縄と同様にリゾート地が多い北海道でもワーケーション推進の動きは活発です。首都圏の企業の社員などに周遊・長期滞在型ワーケーションプランを体験してもらう「北海道型ワーケーション普及・展開事業」に20年度参加する市町村は39で、19年度の2.4倍に急増しました。北洋銀行は首都圏の企業を対象に、道内のホテルのWi-Fi設備や周辺の観光地などを紹介するオンライン情報交換会を開き、道内へのワーケーション誘致を後押しします。
ワーケーションは従来のリゾート地の活用以外にも広がりつつあります。環境省と福島県は20年8月、東京電力福島第一原子力発電所の事故被害からの復興を進めるため、再生可能エネルギーの導入促進による町づくりや国立公園の拠点整備などに協力して取り組む連携協定を締結。磐梯朝日国立公園や尾瀬国立公園に自然の豊かさのPR拠点を整備してワーケーションでの利用推進に取り組みます。長野県飯島町は担い手の減少が進む農業の振興に役立てようと、21年度にワーケーションに農業の要素を取り入れた「アグリワーケーション」を企画。企業の社員に住居を提供して、平日はリモートワークで本業の仕事に、休日は農作業に従事してもらって「稼げる兼業農家」の増加を目指します。