ビジュアル・ニュース解説

ワーケーション、新型コロナ禍で普及加速

2020.11.2 掲載
新型コロナウイルスの感染拡大で、密接や密集を避けて観光地やリゾート地などで働く「ワーケーション」が広がりつつあります。国や地方自治体も普及を後押ししており、働き方改革推進の要因にもなっています。今回はワーケーションが生まれた背景や取り組みの現状などについて解説します。

1.観光地などで仕事をしながら休暇も楽しむ

1.観光地などで仕事をしながら休暇も楽しむ
 ワーケーションは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語です。もともとは米国で2000年代に始まりました。職場から離れた観光地やリゾート地などで仕事をしながら、休暇も併せて楽しむものです。働く場所や時間で仕事と休暇を完全に分けずに接近させた新しい働き方と言えます。
 ワーケーションがクローズアップされている背景には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う働き方の変化や働く場所のニューノーマル(新常態)があります。通勤時や会社内で人の密集を避けるため、勤務時間や場所の制約を受けず、インターネットを活用して自宅などで働くテレワークが急速に広がりました。テレワークが多くの業種で業務に支障がないことが分かったため、Wi-Fiなどのネット環境や設備がある観光地やリゾート地のホテルなどでのテレワークも注目されるようになりました。
 テレワークは「通勤ラッシュで業務に就く前に疲れてしまう」「家庭で家族と過ごす時間がとれない」といった問題を解決できます。ワーケーションなら、リフレッシュしながら仕事に戻ることで、仕事でたまったストレスを発散でき、家族を同行すれば仕事以外の時間に一緒に余暇を楽しめます。企業にとっても社員が長期休暇を取りやすくなるため有給休暇の取得促進につながるうえ、オフィスの面積縮小や通勤手当の削減などのメリットがあります。自然豊かな環境に身を置くことで仕事に結びつくアイデアなどが生まれることも期待できます。
 NTTデータ経営研究所(東京・千代田)が2020年6-7月にJTB、日本航空(JAL)と実施したワーケーションの効果検証実験の結果によると、ワーケーションは仕事の生産性を向上させ、心身のストレスを低減する効果などがあることがわかりました。具体的には①仕事とプライベートの切り分けを促進②組織への所属意識の向上③仕事のパフォーマンスが20%程度上がり、ワーケーション終了後も5日間は効果が持続④心身のストレスが37%程度低減――などが挙げられています。
2020年11月2日掲載