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縮小続くビール市場、酒税改正で反転に期待

2020.8.3 掲載
夏本番を迎え、キンキンに冷えたビールがおいしい季節になりました。ビールの出荷量は価格が安いビール系飲料の発泡酒や第三のビールなどに押されて減少が続いていますが、ビール系飲料の酒税が2020年から3段階で見直されて26年に一本化されるのを控え、状況が変わる可能性もあります。今回はビールの製造法や種類、市場を取り巻く環境の変化などについて解説します。

3.20年から6年間でビール系飲料の酒税が一本化

3.20年から6年間でビール系飲料の酒税が一本化
 ビールの国内市場は年々縮小しています。国内ビール大手5社がまとめた2018年のビール系飲料の課税済み出荷量は3億9390万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で14年連続減少し、過去最低を更新しました。その内訳を見ると、ビールが5.2%減、発泡酒が8.8%減となったのに対し、第三のビールは3.7%増えました。
 20年1~6月のビール系飲料の販売量は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による飲食店の休業や営業時間の短縮などが響いて前年同期比1割減少。家庭の巣ごもり消費や節約志向の広がりで、上半期で初めて第三のビールがビールを上回り、ビールの劣勢に拍車がかかっています。
 発泡酒や第三のビールはビール風味の発泡アルコール飲料です。発泡酒は原料の麦芽の使用割合が50%未満か、50%以上でも麦やコメなど政令でビールに認められた副原料の重量が麦芽の5%以上、あるいは認められていない副原料を使ったものです。第三のビールは麦芽や麦以外の穀物が原料のものや発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたものです。
 現在、350ミリリットル缶換算でビールには77円の酒税が課されているのに対し、麦芽比率25%以下の発泡酒は約47円、第三のビールは28円です。その分価格が安いため、節約志向で発泡酒や第三のビールの需要が拡大しました。ただ、酒税は20年10月から6年間に3段階で変わり、26年10月以降は約54円に一本化されます。まず20年10月の第1段階は発泡酒の税額は変わりませんが、ビールが7円下がり、第三のビールが約10円上がります。
 日本では明治時代に数多くのビール醸造所が設立されましたが、時代とともに集約が進んで中小ビールメーカーは淘汰されました。1994年の酒税法の改正まで、ビールの製造免許を得るには年間最低製造量が2000キロリットルの条件があったため、大手メーカーの寡占状態が長く続きました。94年以降、年間最低製造量が60キロリットルへと大幅に引き下げられたことで再び中小の醸造所が各地で誕生し、大量生産のビールにはない味や香りに特色のあるクラフトビールの生産が相次ぎました。大手のキリンビールもクラフトビールに力を入れており、酒税改正とクラフトビールの台頭でビール系飲料の市場は今後様変わりする可能性があります。
2020年8月3日掲載