DXは人工知能(AI)などのデジタル技術と膨大なデータを組み合わせてビジネスモデルを変革するものです。単なるシステムの更新にとどまらず、開発、製造から販売までの業務プロセスや収益の仕組みなど、ビジネス全体を大きく変える取り組みを指します。具体的には人事や給与など社内のデータ、業務ごとの売り上げや利益などの業績、顧客や取引先の情報など、あらゆるデータを社内で共有し、業務の多くを自動化するデジタル化がDXです。これまでのデジタル化は事業部ごとのデータが各事業部のサーバーに蓄積され、他の事業部のデータと共有や連携がされていなかったり、出張申請や経費精算を申請者がシステム上で入力しても、総務や経理などの担当部署が印刷し、承認印がたくさん押されて保管されたりすることも少なくありませんでした。
人口減や店舗の過剰で競争が激化している流通業界では、多くの企業が顧客を囲い込むためポイントカードや会員カードを発行し、デジタル化したデータを収集しています。ポイントカードなどに記録された情報を基に、購買記録からレジでクーポンを発行したり、好みに合ったモノやサービスを薦めるメールを送ったりする企業も増えています。
電子商取引(EC)サイトを持つ小売業ではポイントカードや会員カードの代わりにスマートフォンのアプリでその機能を提供し、アプリからECサイトを利用できるようにすることで、店舗とECサイトの同じ顧客のデータを一元管理して顧客への働きかけを強め、顧客の満足度を向上させている事例もあります。店舗に設置したカメラで、顧客が一旦手にしたものの購入しなかったり、商品の棚の前で迷った末に買わなかったりした画像データを蓄積すれば、「買わなかった」データの分析もできます。
業務のデータをデジタル化し、データを連携させる動きが加速しているのは、コスト削減だけでなく人手不足への対応もあります。定型業務が多い総務・人事系ではロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を導入し、申請や承認、決裁などの作業を自動化することで少ない人数でも対応でき、残業時間の減少など労務コストの削減も期待できます。RPA導入によって生まれた余剰人員は営業や企画など他の部署の人員補強に回すことで収益向上も図れます。