ビジュアル・ニュース解説

新型コロナウイルス感染拡大で注目――デジタル化で会社を一変させるDX

2020.4.6 掲載
新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務などのテレワークを実施する企業が増えています。ただ、テレワークの推進には業務をデジタルベースで行えるインフラ整備が欠かせません。これを機に、会社を丸ごとデジタル技術で変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速しそうです。今回はDXの現状やその拡大の背景などについて解説します。

2.「2025年の崖」に対応しなければ最大で年12兆円の経済損失も

2.「2025年の崖」に対応しなければ最大で年12兆円の経済損失も
 経済産業省はDXを推進するため2018年に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置。同年9月に報告書「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」をまとめました。報告書は全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズなどにより複雑になってブラックボックス状態のシステムを改善できなかったりする場合、25年以降に最大で年12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘し、「2025年の崖」と名付けています。
 全社横断的なデータ活用ができない場合とは、基幹系システムに20年以上前の大型汎用機(メインフレーム)を使用しているため、業務系システムとの連携が十分ではなかったり、各事業分野別にサーバーが置かれたりするケースなどを指します。レポートによると、現状のままなら25年時点で国内企業の基幹系システムの6割が使用開始から21年以上経過し、システムの維持管理費がIT(情報技術)予算全体の9割以上に拡大。新規のIT投資が難しくなって世界で進むデジタル化で後れをとり、競争力を失うことは確実と指摘しています。旧来のシステムのクラウドコンピューティングへの移行や集約によって保守・維持費用を削減できれば、浮いた費用を新たなシステム開発に投じることで生産性向上につながる好循環が生まれます。
 この問題への対応のほか、24年にはNTT東西が固定電話網をIP(インターネットプロトコル)電話に移行させることにともない、企業間の商品などの受発注に使われている電子データ交換(EDI)をインターネットを利用する仕組みに切り替えなければならず、日本国内で2000社以上が導入しているといわれる独SAPの統合基幹業務システム(ERP)の旧製品のサポートが27年に終了し最新版への移行を迫られます。このため、IT業界の技術者は25年に43万人不足するとして、早期の取り組みを促しています。
 ブラックボックス化した既存システムについて25年までに、廃棄や塩漬けにするものなどを仕分けしながら必要なものを刷新してDXを実現できれば、30年の実質国内総生産(GDP)を130兆円の押し上げると試算。そのために20年までに既存システムの刷新計画の立案や共通プラットフォームの検討など準備を進め、21―25年にかけて「経営戦略を踏まえたシステム刷新を経営の最優先課題とし、計画的なシステム刷新を断行する」ことを求めています。
2020年4月6日掲載