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競泳の池江選手も発症――血液のがん・白血病、進歩する治療法

2019.3.18 掲載
競泳女子のエース、池江璃花子選手が2019年2月、白血病であることを公表し、白血病への関心が高まっています。白血病は血液のがんの一種で、若い世代の発症が多いことが知られています。かつては死に至ることが多かったのですが、近年は治療法の進歩や骨髄バンクの設置で治る患者が増えました。今回は白血病がどのような病気なのかやその治療法について解説します。

2.患者と白血球の型が同じドナーをあっせんする骨髄バンク

2.患者と白血球の型が同じドナーをあっせんする骨髄バンク
 白血病の治療の基本は化学療法で、がん細胞を抗がん剤で攻撃して増殖を抑えます。この治療では正常な細胞も同時に攻撃されて副作用が出やすいため、症状に合わせて抗がん剤投与の量や期間などを調整しながら治療を進めます。
 治療でがん細胞が減ってほとんど検出されなくなった状態を「寛解(かんかい)」と呼びます。寛解になっても完全に治癒したとは限らないので、場合によっては骨髄などにあって血液をつくり出す機能を持つ造血幹細胞を移植します。
 その際に重要なのがHLAと呼ばれる白血球の型で、HLAが患者と造血幹細胞のドナー(提供者)とで異なると、移植した造血幹細胞から生まれるリンパ球が患者の臓器を有害な異物とみなして攻撃し、発熱や発疹、肝臓障害、多臓器不全などを起こすことがあります。HLAは兄弟姉妹や両親、親戚などの血縁者で合致する可能性が高く、造血幹細胞のドナーの優先候補となります。しかし、HLAが合致しないなどの理由でドナーになれない場合、骨髄移植が必要な患者とドナーを仲介する骨髄バンクを通じてドナーを探すことになります。
 骨髄バンクは白血病などの治療で造血幹細胞移植が必要な患者のために、骨髄液などの提供者をあっせんする組織です。世界各地に設置されており、日本では公益財団法人の日本骨髄バンク(発足当初は骨髄移植推進財団)が主体となり1991年から日本赤十字社などの協力を得て運営されており、2016年には移植が累計で2万例に達しました。
 18年末時点のドナー登録者数は約49万4000人で、18年は約3万5000人が新たに登録しました。非血縁者と患者のHLAの適合率は500〜1万人に1人程度で極めて低いため、HLAが適合するドナーと患者が巡り会えるかどうかはどれだけ多くのドナーに登録してもらえるかにかかっています。しかし、ドナー登録ができるのは18歳以上54歳以下と決まっているうえ、体調の変化などを理由に毎年2万人前後が登録を取り消すなど、十分な登録者数を確保できていないのが現状です。
2019年3月18日掲載