有機ELパネルはこれまで製品の良品率(歩留まり)が低く、製造コストが高いという問題がありました。このためサムスンとLGが量産する有機ELパネルも大半が自社の製品向けにとどまっていました。
しかし、最近になって歩留まりが改善して製造コストが下がったことで、ディスプレーへの採用が広がっています。スマホ市場をけん引するアップルは、17年以降に発売するiPhoneに有機ELパネルを採用するとみられており、中国のスマホメーカーでも採用の動きが広がっています。
有機ELの需要増を見込み、パネルメーカー各社は設備投資の拡大を加速しています。サムスン電子は16年に8兆ウォン(約7900億円)程度を投じて有機ELパネルの生産設備を拡充して生産能力をスマホ用パネル換算で5割以上増やし、供給体制の整備を急いでいます。LGディスプレーも今後数年間で有機ELパネルの増産に1兆円規模を投じて、スマホ向けの量産にも乗り出します。
日本勢も動き出しています。12年に日立製作所と東芝、ソニーの液晶パネル事業を統合して発足したジャパンディスプレイ(JDI)は500億円を投じて17年春に有機ELの生産ラインを新設し、18年から本格量産を目指します。16年12月にはJOLEDを子会社化すると発表。液晶と有機ELの研究開発と営業部門を集約して他のメーカーに対抗できる体制を築きます。このほか、中国のパネルメーカーが政府の資金援助を武器に、有機ELパネルの生産に続々と乗り出しています。
国内外メーカーの有機ELパネル生産の増強で、スマホ向けの有機EL市場は急成長する見込みです。