国内では、GPSは米国が運用する衛星約30基のうち、4基から電波を受信して位置を割り出しています。しかし、山間部や都会のビルが林立する場所では電波が遮られ、4基以上の衛星から電波を受信できる確率が低くなるため、位置特定の誤差が大きくなります。
そこで高い精度を安定して確保するため、日本独自のGPSを構築する計画(日本版GPS)が始動しています。10年に打ち上げた準天頂衛星「みちびき」は常に日本のほぼ真上にあるため、山や高層ビルの影響を抑えられます。17年度までにさらに3基打ち上げて18年度から4基体制にすることで24時間利用できるようにし、既に運用中の米国の衛星からの電波と併せて活用して精度を向上させます。23年度には7基体制を目指しており、これが実現すれば日本のシステムだけで位置を確定できます。
日本版GPSは新産業・市場の創出にもつながることが期待されます。農業分野ではGPSでトラクターの位置を把握、制御することにより、種まきから収穫までを全自動化することも夢ではありません。既に日立造船と総務省などは15年1月にみちびきからの電波を使い、オーストラリアの農地で無人トラクターの走行実験に成功しています。このほか、ドローンによる貨物輸送や子ども、高齢者の安否確認などに応用できそうです。