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GPSでどうして自分のいる位置が正確にわかるの?

2016.10.3 掲載
人工衛星から受信した電波を利用して現在の位置を割り出す全地球測位システム(GPS)。自動車のカーナビゲーションシステムやスマートフォン(スマホ)の地図アプリ、「ポケモンGO」などのゲームで活用されているほか、自動運転やドローン(小型無人機)の自動飛行を支える技術としても注目されています。今回はGPSの仕組みと今後活用が期待される分野、国内外の取り組みについて解説します。

2.米国が軍事目的で開発したシステムを民間に開放

2.米国が軍事目的で開発したシステムを民間に開放
 GPSはもともと1973年に米国が軍事用に開発に着手。78年からGPS衛星の打ち上げが始まり、93年から運用されています。
 これに先立ち、83年に起きた大韓航空機が空路を外れてソ連(現ロシア)の空軍機に撃墜された事件を機に、当時のレーガン米大統領はGPSの運用を始めたら、民間航空機の安全航行のために使用を認めることを表明。米国は96年にGPSを課金なしで全世界に開放し、受信機があれば自由にGPSを利用できるようになりました。
 ただし、米国は当初、軍事利用を優先し、民間向けは精度を落としていました。2000年にこの対応をやめたため、測位精度の誤差は約100メートルから約10メートルに縮まりました。
 民間での利用は船や航空機の位置把握から始まりました。現在は自動車のカーナビやスマホの地図アプリ、子ども・高齢者の見守りサービスなどに活用されており、生活に身近なものになっています。最近ではGPSの位置情報を利用して遊ぶスマホ向けゲームが人気を集めています。訪れた先の景色にスマホの内蔵カメラを向けると、画面の中にポケットモンスターが現れる「ポケモンGO」もその一つです。
 このほか、国内約1300カ所のわずかな位置の変化を観測して地震予知に役立てたり、渡り鳥の背中にGPS受信機を取り付けて行動範囲を調査したりするなど、科学分野で利用されています。スマホを持つ顧客の現在地をGPSで特定し、最寄りの店舗の情報を配信するなど、マーケティングへの活用も広がりつつあります。
2016年10月3日掲載