半世紀以上も続いた対立を経て、両国関係は今、大きな転換点を迎えています。
オバマ米大統領は2014年12月、キューバと国交正常化交渉を始めることを表明。15年4月にはフィデル・カストロ氏の実弟であるラウル・カストロ国家評議会議長との首脳会談が実現しました。これを機に国交正常化に向けた交渉が加速しました。
オバマ大統領がキューバとの国交正常化に乗り出した背景には、同国が地政学上の要衝であることがあります。中南米は今後、急速な経済成長が期待されており、北米と中南米を結ぶ地点にあるキューバは戦略拠点として重要性が増しています。近年、中国が経済協力などを通じて影響力を強めているため、米国は対抗する必要に迫られています。残りの任期が2年を切ったオバマ大統領が、任期中に大きな外交上の成果を残したいとの思惑もあるとみられます。
一方、キューバが米国との関係改善に踏み切った最大の理由は国内の経済状況の悪化です。経済制裁の影響で、キューバは外国からの投資や貿易が抑えられていました。経済制裁が解除されれば、各国との関係が改善し、成長が期待できます。革命の立役者だったカストロ兄弟もすでに80歳代で、次世代への引き継ぎの前に、外交上の最大の懸案を解決する意味合いもあります。
日本政府は米国とキューバの関係改善を前向きに受け止めています。岸田外相が15年4月末から5月にかけてキューバを訪問。米国とキューバの国交正常化を見据え、ODAを拡充する考えをキューバ側に伝えました。米国の経済制裁が緩むことで、これまでキューバでの事業展開に二の足を踏んでいた日本企業の進出も活発化しそうです。
ただ、キューバが期待する経済制裁の全面解除には米議会での立法措置が必要で、共和党が多数を占める現状では実現は容易ではありません。オバマ大統領は当面、大統領権限でできる範囲の制裁緩和を進めるとみられます。
また、キューバでは反体制派やジャーナリストに対し、政権による弾圧が続いています。米国はこうした人権問題の改善を求めていますが、キューバ側は内政干渉だと反発しています。
さまざまな障害を乗り越えて、米国とキューバが国交正常化へと着実に進むことができるかが注目されます。