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キューバ、半世紀ぶりに米国と国交正常化へ~どんな国? その背景は?

2015.7.6 掲載
米国とキューバは2015年7月1日、双方の大使館を同月20日に再開することで合意し、1961年から断絶していた両国の国交が54年ぶりに回復しました。両国関係の雪解けを受け、日本政府はキューバ向けの政府開発援助(ODA)の対象拡大を検討、各国の企業もキューバのインフラ投資・資源開発への関与や消費市場の開拓を狙っています。今回はキューバの成り立ちや米国との対立の経緯、両国が国交正常化交渉に踏み切った背景などについて解説します。

1.米国の目と鼻の先のカリブ海にある社会主義国

1.米国の目と鼻の先のカリブ海にある社会主義国
 キューバは米フロリダ半島から南へ約150キロメートル離れたカリブ海に浮かぶ島国です。北米と中南米、欧州などを結ぶ要衝に位置し、約11万平方キロメートルの国土(日本の本州の半分程度)に約1100万人が暮らしています。1492年にコロンブスが航海で訪れて以来、約400年にわたりスペインの植民地支配を受けたため、欧州系やアフリカ系などとの混血が進み、多様な人種が共存しています。
 主な産業は農林水産業で、サトウキビとタバコが特産物です。とりわけ葉巻は高級品として世界的に有名です。鉱物資源にも恵まれ、マンガンやニッケル、クロムなどのレアメタル(希少金属)を産出します。近年は観光振興に力を入れており、貴重な外貨獲得手段となっています。
 キューバは南北アメリカ大陸に初めて誕生した社会主義国で、1991年にソ連が崩壊した後も体制を維持してきました。企業の多くは国営で、土地の私的所有は原則として認められません。政府機関に勤務する人だけでなく、ホテルの従業員やガイドなど観光業に携わる人たちの大半は公務員です。食料や生活物資は安い価格で販売する配給制で、国民の教育や医療は無料です。
 ただ、経済は疲弊しています。近年は主力産品の砂糖の生産量が落ち込み、米国による経済制裁の影響で貿易や国外からの投資は低調です。鉄道や道路、港湾、発電設備などのインフラ整備も遅れています。この5年でせっけんや歯磨き粉、タバコが配給の対象から外れるなど、市民は苦しい生活を余儀なくされています。
2015年7月6日掲載