ビジュアル・ニュース解説

マグロ完全養殖の現状を知る

2015.1.19 掲載
人工ふ化させたマグロの卵を成魚にまで育てて産卵させる完全養殖。乱獲による資源量の減少でクロマグロの漁獲規制が強まるなか、天然資源への影響が少なく安定供給につながるとして期待され、水産各社などが事業化を急いでいます。今回は水産資源としてのマグロに関する基礎知識や漁獲規制の現状、クロマグロの完全養殖事業の動向などについて解説します。

3.マグロ資源減少で強まる漁獲規制

3.マグロ資源減少で強まる漁獲規制
 天然のマグロは近年、健康志向の高まりや和食ブームを背景に世界的に消費量が増えたため、乱獲により資源量が減少しています。日本近海を含む太平洋のクロマグロの資源量は20年ほど前から減少が続き、現在は約2万6000トンと過去最低水準近くまで落ち込んでいます。
 クロマグロの資源量減少の深刻化で、「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」「全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)」「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」などのマグロ資源の国際管理機関は漁獲規制を強めています。太平洋の西側の未成魚(30キロ未満)の漁獲量は2015年から、02〜04年の平均の半分に減らされ、太平洋の東側でもこれまでの半分以下をめざす予定です。一方、いち早く未成魚の漁獲を禁止した大西洋では資源量が回復しており、15年から漁獲枠を段階的に増やします。日本は大西洋産の蓄養クロマグロを大量に輸入しており、国内のマグロ消費量も減少傾向にあるので、規制強化が直ちにクロマグロの供給不足や価格高騰を招くことはなさそうです。
 マグロ好きにとって気がかりなのはクロマグロの国際取引規制です。国際自然保護連合(IUCN)は11年に大西洋のクロマグロを、14年11月には太平洋のクロマグロをそれぞれ絶滅の恐れがある野生動物を指定する「レッドリスト」に加えました。野生動物の国際取引を規制するワシントン条約はレッドリストを保護対策の参考にしており、将来的に禁輸など保護対策が強化される可能性があります。
2015年1月19日掲載