ビジュアル・ニュース解説

マグロ完全養殖の現状を知る

2015.1.19 掲載
人工ふ化させたマグロの卵を成魚にまで育てて産卵させる完全養殖。乱獲による資源量の減少でクロマグロの漁獲規制が強まるなか、天然資源への影響が少なく安定供給につながるとして期待され、水産各社などが事業化を急いでいます。今回は水産資源としてのマグロに関する基礎知識や漁獲規制の現状、クロマグロの完全養殖事業の動向などについて解説します。

2.繊細で養殖が難しかったマグロ(2)

2.繊細で養殖が難しかったマグロ(2)
 天然の稚魚に依存する蓄養に対し、卵を人工ふ化させて育てた魚から卵を採ってふ化させる養殖法を「完全養殖」といいます。完全養殖はほとんどの魚でできるようになっていますが、マグロはかつて完全養殖が極めて難しいとされていました。マグロがとても繊細なためです。稚魚は特に皮膚が弱く、人間の手が触れただけで死んでしまいます。光や音に過敏ですぐにパニックに陥り、いけすの網などへの衝突死も頻発しました。肉食のため共食いの習性もあります。完全養殖を実現するにはこれらの壁を乗り越える必要がありました。
2015年1月19日掲載